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退屈日記「MATSURI、父ちゃんの新しい世界。ここに」 Posted on 2021/09/24 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、最近の父ちゃんはラベルのボレロを弾くようになってから、ますます、クラシック・ギターの魅力にとりつかれてしまい、最近は、日本祭りを主催したことをきっかけに、日本の古代の躍動感をテーマに、「MATSURI」というギター曲まで作ってしまった。
先日、9月17日、パリ文化会館で、初お披露目したのだけど、昨日は一日かかって、それのYouTube収録をやった。
今朝、アップロードが感完了したので、まずは、能書きは脇にどけて、出来立てほやほやの作品をご覧いただきたい。

動画はこちらをクリックください。↓



このナイロン弦の優しくて、強い響きが本当に好きで、上の階のマリーさんが、
「ムッシュ、ギターかえたんですね? 優しくて強い響きが心地よく建物内に響いているのよ」
と言ってくれた。
なんとライブにも来てくださったのだ。
そこで、このMATSURIを作ったのだけど、祭りという古代からあるリズムと響きをギターで表せたらなぁ、と思いを込めさせていただいた。
祭り(MATSURI)は本来、神仏を祀る祭事であったが、今では世俗的な催事としての祭りが一般的となっている。
しかし、日本人はその祭りという言葉の中に超自然的原始信仰の息吹をどこかで持ち続けて生きているのだ。
ぼくはそういう世界観から、この祭りという響きが好き。
ぼくらが「祭り」と発音するとき、その根底には、豊穣への感謝や祈りが含まれている。
そういうシンプルな古代人の喜びを、この音楽の中にこめて、コロナ禍のこの世界を耐え忍ぶ世界中の人々に届けたい、と思ったのである。

退屈日記「MATSURI、父ちゃんの新しい世界。ここに」



撮影は家の西側にある、仕事場の窓ぎわで、夕陽を背景にアイホンと小型カメラで撮影をした。
音は携帯でとった。とくに凄いマイクは使ってないところが、かえって良かったのかもしれないね。えへへ。
つまり、がらんとした部屋、まだ家具があまりないので、よく響いた。
途中で、声が出ている。
喜びがちょっと炸裂した瞬間だった。
きっと、日本の祭りという概念の中にある、生きる幸せ、とか、そういうものが出た瞬間かな、と思う。笑。
10月4日のバスツアー&ライブでも、パリの歴史的建造物を前に、この曲を演奏してみたいなぁ、と思っているので、ぜひ、ご参加いただきたい。
来年には、念願の日本でのライブも実現させたい。欧州のイベントでもこの曲を弾きまくりたいなぁ、と思っている、いまだ、少年のような初老であった。

退屈日記「MATSURI、父ちゃんの新しい世界。ここに」



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