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リサイクル日記「夏のパリは泥棒天国。ママ友が狙われて緊張の夏」 Posted on 2022/06/24 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、パリは人がいない。7月と8月はパリから人がいなくなる季節なので、つまり、泥棒天国ということになる。
ぼくの知り合いのママ友、イザベルのところには監視カメラが付いている。
ぼくも買おうとしている人気の機種で、一万円くらいなのだけど、玄関に誰かが立つと、携帯にその映像を届ける仕組み。しかも、マイクで相手を威嚇することもできる。
イザベルは昨日まで、ノルマンディにお子さんらと旅に出ていた。離婚をしているので、今は独身なのである。
夜、寝ていたら、携帯が不審者が玄関前にいることを伝えた。
驚いて、イザベルが携帯を覗き込むと、黒い帽子をかぶり、黒いマスクをした人がドアをこじ開けようとしていた、というのだ・・・。

リサイクル日記「夏のパリは泥棒天国。ママ友が狙われて緊張の夏」



驚いたイザベルは慌てて、マイクで、あなたは誰? 警察に通報しました、と告げた。
すると、泥棒らしき男は下を向いて逃げ出したというのだけど、いやはや、実に怖い話しである。監視カメラがなければ、泥棒が入っていたかもしれない。
イザベルは今日、バカンスを打ち切り、子供たちとパリに戻ってきた。
全部の部屋の明かりをつけっぱなしにして今夜は寝ることになるという。
「何かあれば、もちろん、飛んでいくよ」
ぼくらも明日から田舎に行くので、気休めでしかないが、一応、励ましておいた。
ちなみに、イザベルの家に押し入ろうとした泥棒は防犯カメラが全て記録している。
これがその時の写真の一部。全部をお見せできないけど、実は、犯人の顔まで映っている。日本だったら、警察がこれをもとに犯人を捜すのだろうけど、フランスはあまりにこういう事件が多いので、実際に押し入られないと警察は何もできない。

リサイクル日記「夏のパリは泥棒天国。ママ友が狙われて緊張の夏」



泥棒たちはグループで行動をしているので、まず、偵察隊が市内を徘徊し、雨戸の閉まっている家をチェックする。
実は、前持って、この偵察隊にある程度、地元のタレコミ屋から情報が渡っているようだ。どの建物にも、様々な人々が出入りをするので、用心しないとならない。
あそこのアパルトマンは高齢者しかいない、とか。この家族はこの時期は田舎に行って留守だとか・・・。すると、偵察隊が、狙いを定めてやって来て、本当にいないか、調べて、本体に連絡をし、ついに、プロの集団がやってくる。
もう、この連中に目をつけられたら、勝てない。ドアなんか一瞬であけられてしまう。
複数で来るので、下手に逆らうと命も危険なのだ。
ママ友のところにやってきたのは1人で、そういうプロ集団とは違う、単独犯のようであった。それでも、怖い。



ぼくの知り合いは白昼堂々、泥棒連中に押し入られた。
その時、ソファで寝ていたので、そのまま寝たふりを続けて、難を逃れたが、起き上がって「泥棒ー」と叫ぼうものなら、その場で刺殺されるか、ぼこぼこにされていただろう、と言っていた。
夏、人がいなくなるパリは美しいのだけど、同時に、住人にとっては緊張みなぎる季節でもある。
とくに、うちのように、管理人が常駐していない建物は狙われやすい。



ところで辻家は、今、2台の小型カメラが作動している。田舎の家にも1台つけている。
セコムとかないのか、とよく言われるけど、こちらにももちろん警備会社はいろいろある。
イザベルも実はフランスのとある会社と契約をしているのだけど、そこは、警報がなっても日本の警備会社みたいにすぐに誰かが飛んできてくれる、ということはないようだ。
契約のタイプによっては、飛んできてくれる高額のものもあるけど、電話がかかってくるだけのものもある。イザベルが契約しているのは、それ・・・。

なので、自衛のために、新たな監視カメラを付けたという次第だ。
思えば、ぼくもかつてはセコムのお世話になっていた、日本に家があったので、そこはすぐにセコムの人が飛んできて問題を解決してくれた。セコム、ありがとう。
ぼくのいとこがオーストリアに住んでいて、旦那さんがドイツの防犯警備会社に勤めているのだけど、彼はいつも背広の中に拳銃を持っている。
国が違うと防犯の意味も違ってくる。
一度、拳銃を触らせてもらったことがあるけど、人が殺せるレベルだった・・・怖。
「ひとちゃんも、ドイツの会社と契約すれば。心強いよー」
とすすめられたのだけど、そもそも、ぼくの家には、金目のものが一切ないので、・・・。笑。

リサイクル日記「夏のパリは泥棒天国。ママ友が狙われて緊張の夏」

追記。雨戸(ボレー)をずっと閉めている家は留守だと泥棒に言ってるようなもので、だからと言って、開けて旅に出るのも不用心だし、パリジャンはいつも夏になると悩んでいるのです。



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