JINSEI STORIES

退屈日記「田舎のマルシェにも知り合いが増えた。顔出すと喜んでもらえることの幸せ」 Posted on 2021/07/09   

某月某日、田舎のマルシェにも知り合いが増えてきた。
日本人が珍しいのか、買い物に行くとやたら、ほんと、あちこちから声がかかる。
そのうち、顔見知りが出来、まだここに通いだして2,3か月だとは思うけど、アジア惣菜店のご夫婦、牡蠣屋のマダム、クスクス屋のレバノン人のおやじさん、八百屋のムッシュ、船で魚を売りに来る漁師さんなどなど、気が付くと、やあやあ、元気かい、と立ち話がはじまってしまい、なかなか、前に進めなくなる・・・。
で、クスクス屋のレバノン人は、日本人だよ、と言ったら、揚げたてのファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)をくれて、ぼくはカルロス・ゴーンと同郷のレバノン人だよ言われ、一瞬、ひよったけど、そういうのがきっかけになり、仲良くなって、今は、そこでクスクスを買わないでも、通りかかるだけで、なぜか、ファラフェルを「おいおい、どこ行く、ほれ、持ってけ、友だち」と言われる仲になった。これが、めっちゃ美味いのである。

退屈日記「田舎のマルシェにも知り合いが増えた。顔出すと喜んでもらえることの幸せ」



牡蠣屋のマダムは無口で特に何も世間話はしないのだけど、帰りがけに、行者ニンニクをくれたことがあった。なんで?
「裏庭に自生しているのよ」とのことだったけど、会話がなくても顔を覚えられてるんだ、と嬉しかった。
そこではいつも12個500円の一番安い、でも一番食べやすい牡蠣を買って、オイル漬けにするのが楽しくて、必ず行くと寄る店の一つになった。
オイル漬けで作る牡蠣のパスタは最高だ。これが田舎の今や、定番!

退屈日記「田舎のマルシェにも知り合いが増えた。顔出すと喜んでもらえることの幸せ」



ただ、安いだけあって、牡蠣を開けるのは自分でやらなとならない。この牡蠣をこじ開けるナイフも、専門店がマルシェ内にあり、おばあちゃんが店番していて、1ユーロで買えた。安い。
ただ、ナイフを刺す位置を探すのが面倒で、すぐに見つかれば、ガバッと開いてくれるのだけど、敵もさるもの引っ搔くもの、毎回悪戦苦闘している。
しかし、このマルシェの中で一番仲良しなのはこのあたりの漁師のジャン・ジャックさん。一見、神経質そうなんだけど、ぼくがあまりに毎回顔を出すのだから、覚えられ、一度心を許してくれるとほんと、田舎の人のサービスってすごい。
夕方、店じまいの時間を狙っていくと、どうせもう売れないから、とルジェ(赤い魚)とかごそっとくれる。ええええ、1人だからこんな喰えないよ、と言ったら、ルジェは焼いて、ミキサーにかけて、スープ・ド・ポワソンにしたらいいよ、と作り方まで教えてくれた。美味かった。

退屈日記「田舎のマルシェにも知り合いが増えた。顔出すと喜んでもらえることの幸せ」



だいたい、みんな日本語の「ありがとう」と「さよなら」はしゃべる。
あと「お元気ですか?」と「美味しいね」と続く。
お約束みたいなもので、必ず、自慢するように知っている日本語を連発するので、微笑みながらも、またかよ、とちょっとうんざりしているのも事実。笑。
でも、嬉しいから、田舎のマルシェでのやりとりは片言の日本語から、はじまる。
まだ、通いだしてせいぜい2,3か月くらいなのだけど、知り合いとはいかないまでも、顔見知りはかなり増えた。
ボンジュールと挨拶をしてくれる人が増えると、やっぱり、嬉しいものだ。
その中に、タイ料理の屋台があって、ナタリーとアレックスがやってる。シェフのアレックスは相撲選手ぐらい太っちょで、でも、人懐っこい。
ナタリーはどこかハウルの魔女に、似ている。多分、偶然なんだとは思うけど、笑。似ている。
で、ぼくはそこで毎回、炒飯を買うのだけど、これがマジ、本場の味。最高にうまい!
パラパラ感が半端ないのだ。
タイで修業したの、と聞いたら、息子の嫁がタイ人だ、と教えてくれた。一度、結婚式の時にバンコクに行き、感動し、フレンチレストラン畳んで屋台やりはじめたという変わったご夫婦。
ぼくはちなみにそこでは、作家じゃなく、ミュージシャンで通っている。小説家というとどんな小説って聞かれるので、面倒だから、ミュージシャンで通した。笑。
ここも、行くと必ずなんかくれる。今回は、揚げ春巻きを一個おまけにくれた。



こんな風に、だんだん、親しくなってきた新しい土地のマルシェ、なぜか、一周するだけで、結構な戦利品が集まる。得な性格である。
パリでもよくものを貰うのだけど、たぶん、何か、物欲しそうな顔をしているのかもしれないね。大丈夫なのか、と思わせる何かオーラ出しているのかもしれない・・・。笑。知らんけど・・・。
挨拶は大事、というお話。

退屈日記「田舎のマルシェにも知り合いが増えた。顔出すと喜んでもらえることの幸せ」

ボンジュール、サヴァ(こんにちは、元気ですか?)と言いに来る変なロン毛の日本人ということなのだろう。
今日は帰りがけにクスクス屋のおやじにつかまってしまい、野菜食べたかったから、ちょっとでいいから、と一人前頼んだら、大盛でくれた。食べきれないよ、と必死で断ったのだけど、健康にいいから、明日まで持つからもってけ、と言われ、断るのは失礼だから、有難く、・・・。しかし、炒飯と春巻きとクスクス、どうせぇっちゅうねん。笑。

つづく。

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