JINSEI STORIES
退屈日記「ボンジュール、辻仁成の春ごはん。まだ視聴できない父ちゃんからのお詫び」 Posted on 2021/06/19 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、実はまだ、ぼくは自分が出演、カメラを回したNHKBS「ボンジュール、辻仁成の春ごはん」を観ることが出来ていないという衝撃の報告である。
制作会社の西山さんからURLリンクを頂いたが、クリックしても「パスワードをいれる」と出てきて、思いつくパスワードを入れ続けているのだけど、いかない。
で、西山さんにいかないとメールしたら、普通にクリックしたら出るはずです、と戻ってきたが、普通にいかない。
で、パリスタッフは閲覧出来たというのだが、ぼくはできない。なんでだ!!!
「事務所まで見せに来て」とも土曜日なので言えないので、父ちゃん、悶々としながら、インスタとツイッターなどのコメントを拾って、どんな感じだったのか、想像力で見ている土曜日の朝(フランス時間)なのである。あと、ぜんぜん、何年かぶりの友達からもメールが届いたので、さすがNHKだなぁ、と感心している。
その中で、コメントで一番反響が大きかったのは「子羊肉のクスクスがおいしそう。食べたい」というものであった。
あれは本当においしい。新刊の「父ちゃんの料理教室」(大和書房)の中に、その料理について詳しく書いてあるので、(レシピなども)参照いただければ幸いだけど、メルゲーズのソーセージは日本では買えないので、代用品としては辛口のソーセージ(ピリ辛フランクフルト)などを入れてみてもらいたい。
しかし、羊肉は絶対不可欠である。
お肉屋さんに行けば買えるわよ、とうちの母ちゃん。なるほど!
それから、次に多いコメントは「セーヌ川クルーズの映像が最後に使われていましたよ」という嬉しいお知らせであった。想像通りの明るいラストになったのかな、と思ったら、安心できました。やっぱ、パリの青空には救いがあります。
あと、もう一つ、コメントを読んでいてうれしかったのが、奥さんに見せられて一緒に見たという男性の方からの反響が大きかった、という点で、いわゆる、お父さん世代の方々が、番組を見たあと、料理をしだした、というコメントや、実際に知り合いからも、料理を勉強したい、と連絡がきたり、これはやってよかったな、と思った。
というのは、ぼくがあの番組でお伝えしたかったことは、「幸せというのは、日々の生活の中にあるもので、毎日をどうコツコツ生きるのか」に尽きるからなのである。
その毎日の中には、この日記でも書かせてもらってるように、息子を怒鳴りつけたり、胸を痛めたり、笑いあったり、泣いたり、本当に大波小波、いろいろとある。
でも、それでも小舟は荒海を渡っていくのだ。心地よい日もあるし、太陽や月に感動する日もある。
その毎日の喜びの中に、ぼくは料理が置かれていると思っている。あ、買い物も!
そして、喧嘩しても家族で食べる。「美味しい」が再び家族をつなぐ、ということである。なので、世のお父さんたちが、キッチンに立ってみたい、と思ってもらえた、父ちゃんのダイナミックな料理をみて、いいじゃん、いいじゃん、と思ってもらえたみたいだから、これは朗報なのである。
男子厨房に入るべし、が、コロナ時代の新しい幸福提言となる。
※ ちなみに、残ったクスクスは、カレー粉を入れて羊肉カレーにして、翌日食べるのであーる。これがまた、うめー。
あの番組の中で、ぼくが作った料理はレシピが大事なのじゃない。
あれをマネするというより、マネしたい方はレシピ本を読んでもらえばいいのであって、あの番組で言いたいことは料理をする毎日がいかに大事か、であった。
ロックダウンの厳しい制限下でも、ぼくらは料理で乗り越えることが出来てきた。
たった、それだけのことが言いたかった。
でも、それが一番なんじゃないか、と思うのである。ですよね?
※ここで、お詫び。実は「ボンジュール、辻仁成の春ごはん」の中で、二コラが豆ごはんおにぎりを作る場面がありますが、息子が言う「C’est bien fait」よくできたね。というテロップ部分で、打ち間違いがあり、ぜんぜん、でたらめな仏語が混じっています。単純に打ち間違えたか、変換ミスだそうです。大至急、訂正をさせてください。
それから大和書房刊の「父ちゃんの料理教室」でも誤植が見つかりました。以下の煮込みハンバーグのところのragoumtのmは誤植です。ラグー、なので、mはおかしい。すいません。あわせてお知らせさせていただきます。
正解はこちら、↓
煮込みハンバーグ
Ragoût de boulettes de boeuf
さて、父ちゃんは今日もキッチンに立ちます。そこが父ちゃんの安寧の場所だからである。えへへ。
つづく。
※ 希望の光りが降り注ぐセーヌ川から。音楽は素晴らしいね。、苦しい時には歌ってください。バラ色の人生、を求めて。