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親善大使日記「フランス親善大使に就任しました。そのご報告です」 Posted on 2021/06/01 辻 仁成 作家 パリ

親善大使日記「フランス親善大使に就任しました。そのご報告です」

某月某日、実は、去年のこと、フランスの外務省の外郭団体、アトゥー・フランス(フランス観光開発機構)というところから、いきなり、
「あなたはフランス親善大使に任命されることになりました」
というメッセージが届いたのである。
なんとなく、上から目線~を感じたので(実際は、そんなことはなかったのだけど、誰もが引き受けることが前提みたいな印象だった)、お断りすることもありうると思いつつ、いろいろと話しをしていたのだけど、コロナ禍がなかなかおさまらず、日本の観光客もパリから消えてしまい、何かこのまま世界はどうなってしまうのだろう、と思ったら、自分にできることかもしれない、とその親善大使の仕事を前向きに考えるようになっていくのだった。
その間、半年以上、もっとかな・・・、ぼくはこの就任について考え続けたのである。
中途半端にやったらいけない、と思ったのもある。



というのはうちの息子はフランスで生まれた。
日本人だけど、日本では暮らしたことがないし、圧倒的にフランス社会になじみ、そこで生きている。
なのに、親は仏語もろくに話せない。
何か、息子が生まれた国に、自分が出来る形で貢献してもいいんじゃないのか、と思ったのである。ボランティアとして・・・。
で、去年、東京でアジアの責任者であるフレデリック・マゼンク代表、広報担当の増田さんと三人で会った時、ぼくは意を決し、この話しをお受けすることをお伝えすることになる。
ところがその後、感染が拡大し、収束するはずのコロナも収束せず、本当だったら、オーチャードホールのコンサートの直前に、東京のフランス大使館で任命式をやる予定が組まれていたのだけど、これが中止になり、今回、セーヌ川クルーズライブのタイミングにあわせて、パリのアトゥーフランスの本部での任命式になったのである。

親善大使日記「フランス親善大使に就任しました。そのご報告です」



親善大使日記「フランス親善大使に就任しました。そのご報告です」

で、ぼくが何をやるのか、というと、フランスの素晴らしい文化や観光地などを日本に紹介するというミッションがまず、ひとつ。
先方から提案されたのはデザインストーリーズとアトゥー・フランス(フランス開発公社)が組んで、フランスの田舎や観光地や名所をどんどん日本に紹介していくという企画・・・など。
フランスの各都市の広報や観光事業部にはすでにぼくの情報が伝わっていて、名前を今は出せないけど、各地の観光部署が関心を示してくれているというのである。
旅はそもそもぼくの人生そのものなので、この任期中に出来る限りフランスを旅してみよう、ということになった。
これはデザインストーリーズにとっても、素晴らしい話しだ、と思う。DS編集部も盛り上がっている。
たとえば、昨日のセーヌ川クルーズライブもアトゥー・フランスがコラボレーションで参加してくれたのだが、あのライブをフランスのたとえば南仏のビーチなどからやったっていいわけで、「いろいろなことが出来そうですね」という感じになっている。
ぼくが大使をやってる間は「フランス祭り」ががんがん続きそうな気配になってきた。

親善大使日記「フランス親善大使に就任しました。そのご報告です」



で、先の金曜日に、ぼくはこちらの総裁であるカロリーヌ・ロブシェ氏と本部で面会をし、ディプロマを頂くことになった。
これが正式な就任の証明書になるようだ。
カロリーヌは学生時代、東大などで学んだそうで、大の日本好き。
それもちょっと嬉しかった。
日本好きなのが、言葉の端々から伝わってくる。実際、日本語も少し話す。
学生時代のホストファミリーといまだにお付き合いが続いているというのだからすごい。
これは引き受けてよかったなぁ、と思った。
アトゥー・フランスは世界30か国にブランチがあるようだけど、その中でも東京は特別なのだそうだ。
日本人はフランスのことを本当によく理解しているし、またフランス人も日本のことが大好きなので、ここはぼくにできることは全力でやってみたい、と思った次第である。やります!
まずは、なんだろう? 日本の旅行会社がいま、大変厳しいということなので、ぼくは彼らとアフターコロナの観光について議論を重ねてみたいと思う。
何か面白いアイデアが飛び出すはずだから!!!

※ こちらが就任式の様子である。カロリーヌ・ロブシェ総裁と歓談中のわし。



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