JINSEI STORIES
退屈日記「衝撃、あの感染大国アメリカから渡航中止を勧告された日本」 Posted on 2021/05/25 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、昨日、久々に衝撃的なニュースを目にした。
オリンピック開催まで2か月を切った今、アメリカ国務省が米国民への「日本への渡航中止」を勧告、というものだ。
これ、日本ではどう報じられているのかぼくには分からない。
3週間前、ぼくがミスターサンデーに出演した時、橋下徹さんが「フランスは感染者2万人超えている、日本とは桁が違う」とおっしゃられていた。
3週間ほど前のことだけど、つまり、日本は感染者数でフランスより断然低いのにもかかわらず、アメリカは日本への渡航中止を勧告したということだろうか。※、現在、フランスの感染者数は1万人前後まで下がっている。
逆にフランスは6月9日よりアメリカ人は再びエッフェル塔に上ってもよい、セーヌ川クルーズをしてもいい、とマクロン大統領が宣言を出した。
つまり、アメリカ人は「ウエルカム」の対象国なのである。
アメリカは何を基準に、日本を渡航中止勧告国に指定したのか、ということが気にならないか。
もしかすると、アメリカの国務相は日本国民よりも、現在の日本の状況を認知しているのかもしれない。
オリンピックを前にアメリカは日本が検査数をコントロールしていると思ってる可能性もある。
ワクチン接種に関してはほかの先進国に比べ失敗しているのは明らかだし、インド由来の変異株が市中に出回りだしたことなど、CDCが判断をした可能性があり、日本政府の「オリンピックに影響はない」「安心安全なオリンピック」をアメリカがにわかに批判したということになるのか・・・。
これが何を意味するのか、を冷静に分析する必要がある。
実は欧州にアメリカ人が戻ってきている。
フランスでは6月9日からアメリカ人はワクチン接種を証明、陰性証明があればどんどん入ることが出来るようにした。
スペインなどの観光地にもアメリカ人が戻っている、と訊いた。
アメリカが欧州への渡航を国民に許可した背景に、ワクチンの影響があるのはいうまでもない。
一方で、日本への渡航を中止にしたのは、ワクチンの接種率だけが原因じゃないように思うのだ。
きっと、オリンピックを優先するがあまり、日本が今、変異株防御に完璧ではないのじゃないか、という危惧を米国が抱いている気もする。
あれだけの感染者を出し、あれだけの死者を出したアメリカが、日本への渡航中止っていう理由が最初、わからなかった。
冗談かと思ったほど、衝撃的なニュースだった。
いったい、アメリカの国務相は何を知っているのか、と勘ぐりたくなる。
そこから、本当に日本はこのままオリンピックをやってしまって大丈夫なのか、と再度、懸念が起きる。
日本はオリンピックをやったことで、取返しの付かない事態を招くのじゃないか、という想像が普通に起きてしまう。
ヤフーの孫さんがそういう警告を発した、その一方で一部の政府寄りのコメンテーターがそれを批判しているけど、じゃあ、アメリカはなぜ、自国民を日本には行かせないというのだろう。
このニュースだけは無視できないと思った。
ぼくは息子にパパのライブが終わるまで家から出ないでくれとお願いをした。
濃厚接触者の追跡が半端ないので、そこに触れるとライブが出来ない。
ぼくの周りで濃厚接触者に認定されイベントに出られなかった人が数名いる。追跡をするためには、正確な検査が求められる。
フランスにアメリカ人が戻ってきているのは、ワクチン接種と政府の検査と追跡の徹底をアメリカが評価しているからだろう、とは考えられないだろうか?
アメリカが「日本への渡航中止」を自国民に勧告したことの意味は大きい。
政府の方が、問題ない、と発言されていたけど、安心安全、というこういう言葉をこのよな状況下であまりに気軽に使ってしまう、今の日本政府に、どうしても、問題あり、を感じてしまう。