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退屈日記「心配事がてんこもりの父ちゃんからの前向きに生きるという報告」 Posted on 2021/05/24 辻 仁成 作家 パリ

退屈日記「心配事がてんこもりの父ちゃんからの前向きに生きるという報告」

某月某日、生きているといろいろなことで翻弄される。
とくに心配事に毎日振り回されて、へとへとになる。
ここのところのぼくの一番の心配事は5月30日のセーヌ川クルーズ&ライブの日の天候であった。
ぼくはずっと天気予報と睨めっこしていた。
今だから言うけれど、昨日の夕方まで実は雨だったのだ。
土曜、日曜、月曜とそのあたりが40%から50%の雨の予報であったが、今朝、チェックをしたら、ご覧ください。じゃじゃじゃじゃーん。

退屈日記「心配事がてんこもりの父ちゃんからの前向きに生きるという報告」



ということで日頃の行いのいいぼく、やっとここに来て、運が回ってきたかもしれない、今頃・・・。
過去3回、ライブが中止になっているので、ここで雨とか降られたら、さすがに辛いなぁと思っていたので、幸先が良い。
コロナ禍なので、まだまだ安心はできないけれど、あと6日後にはいよいよセーヌ川ライブなので、ここは気を抜かず気合いを入れて気張って挑みたい。
NHKの父ちゃん密着のドキュメンタリーも(自主)撮影が終わり、現在絶賛編集中(とつぜん、監督さんが現れた。西山監督だ、よろしくっす)ということで、放送日が6月に決まった。(知らぬ間に、情報解禁になっていた)

タイトル:『ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん』
放送:NHK-BSP 6月18日(金)22時〜22時59分



退屈日記「心配事がてんこもりの父ちゃんからの前向きに生きるという報告」

どうやって撮影をしてきたかというと、ご覧頂きたい。この一枚の撮影風景自撮り。
ぼくの右側に積まれた箱(下が米びつ、上がワインの箱)、そのうえにカメラ(ソニーのZV-1)が・・・、
そして下には手元を移す最新型のアイホン12pro、・・・4Kで撮影している。
今回の撮影はほぼほぼ、この2台でやった。
最初、ピエールがでかいカメラぶん回していたけれど、手振れがひどくてLさんたちに不評だったので、学校の体育館の裏に呼び出し、文句を言ってたら、忙しいとか言い出してばっくれた。(それは冗談だが、ファッションの仕事で忙しいみたいだ)
で、なんでこうなったかというと、制作会社のLさんに、どうしても料理をしているところをもっともっと撮影してほしい、とお願いされたから・・・。
スタイリストやメイクはいない。記録も、録音さんも、照明さんもいない。照明道具なんかないし、そのままの世界観をそのまま撮影してきた。
ドキュメンタリーだから、メイクとかいりませんよね、と言われ、追い込まれた。ぼくだって、歌手なのに、・・・。
ぼくは忙しいからもうやめたいと何度か申し出たのだけど、結局、2月、3月、4月、5月まで撮影が続いたのだ。それだけ、すごいということで、つまり、これはもう期待しないかないでしょ? えへへ。
自分で自分に密着するという前代未聞のコロナ禍撮影をやりとげた父ちゃん。
もしかすると、この方法が今後、テレビ番組制作の主流になるかもしれない。
ノウハウ本を大和書房さんあたりで出版したろうか?



で、この撮影方法で一番難しいのは、料理している手元の撮影をしながら、自分の全体を撮影しないとならない点で、そこでこの数か月、ぼくは悩みに悩んでこの撮影方法を編み出したのである。
しかし、撮影してみると、頭が切れていたり、画面が歪んでいたり、音声がとれてなかったり、なかなか高度で、しかも、「やった、撮れた」と思って動画をチェックすると、髪が爆発していたり、後ろに洗濯ものがうつっていたり、と、どんだけ苦心をしたことか・・・。
きっと番組を見る方々は涼しい顔して料理を楽しそうにしているぼくをみて、「素敵だなぁ、パリのキッチン」と思うかもしれないけど、現実は戦争なのだった。
しかも、コロナ禍でロックダウン下での撮影である。
Lさんのリクエストに何度ブチ切れたことか。最近は、Lさんからメールが入らなくなって、ぼくは用済みになった、ということが分かり、この件に関しては、こっそり落ち込んでいる、晩春の父ちゃんであった。

地球カレッジ



ともかく、自分でカメラを回し、自分のドキュメンタリーをするというめっちゃ異常な番組もぼくの手を離れたということは、ある意味、めでたい。
ドキュメンタリーと言ってきたけど、多分、違う。
最初、参加していたカメラマンのピエールも途中でいなくなったし、気が付けば自分ひとりでカメラを回していた方が多かったので、ドキュメンタリーといえば、ドキュメンタリーではあるが、自撮り番組と謳う方がいいね。
「世界初、NHK自撮り番組」が正解。
突如出現した監督さんとも話したことはないし、プロデューサーのLさんはもはや、過去の人になったし(笑)、製作費の建て替えは次回のぼくの日本帰国まで戻ってきそうもないし、やれやれ、いろいろと楽しみで仕方ない。きっといい番組が出来ることは間違いないと思うので、乞うご期待。

退屈日記「心配事がてんこもりの父ちゃんからの前向きに生きるという報告」



昨日発売になった大和書房の「父ちゃんの料理教室」はAmazonの売れ筋ランキングで12位の滑り出しだそうで、まずは、頑張ったので読まれていて、凄く嬉しいね。
ちなみに、簡単レシピランキングで1位(簡単じゃない!!!)、フランスエッセイ部門でも1位、芥川賞受賞作家部門でも1位、(ちなみに、「オキーフの恋人、オズワルドの追憶は7位)という、なんか嬉しい報告だった。
八木さんともLさんを相手にして格闘しているあいだ、昨日の日記で書いた通り、鬼のだめだしを数十回とくらい、笑、でも、思うに、ぼくはきっとマゾなんだと思う。
そういうものに必死にこたえようとするところが辻仁成の真面目なところなので、八木さんにもLさんにもいろいろと悪く書かせてもらったけど、寛大な心で許していただきたい。「父ちゃんの料理教室」は書店さんで好評のようなので、推移を見守りたいのである。

退屈日記「心配事がてんこもりの父ちゃんからの前向きに生きるという報告」



退屈日記「心配事がてんこもりの父ちゃんからの前向きに生きるという報告」

ということで、ぼくの手を離れた二つの大きな仕事、ちょっと気が楽になった。
そして、今は30日の「セーヌ川クルーズ&ライブ」に向かってる父ちゃんだけど、先ほど、東京の知人から「セブンイレブンにお前のチラシが貼ってあったぞ」と連絡があった。チェックに行けないから、もし皆さんが見かけたら、ツイートお願いします。
ぼくがリツイートします!!! 宣伝のために。
なにせ、主催者の中原さん以下、ホットスタッフさん、ぴあさんの未来まで背負った父ちゃん。
セーヌ川クルーズ&ライブという前代未聞の企画が日本で受け入れられば、厳しい音楽業界に新しい希望を届けられるかな、と・・・えへへ。
でも、とりあえずは、念願のライブが出来そうなので、今週は重たいものを持たず、包丁で手を切らないように出前で済ませ、コロナに気を付けて、あと6日後に迫った、ライブに向けて、まい進をしたいと思っている。

Lさんから特大のシャンパンがライブ当日、船の上に、ひっそりと届くだろうことを期待して!!

つづく。

退屈日記「心配事がてんこもりの父ちゃんからの前向きに生きるという報告」



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