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退屈日記「七か月ぶりにテラス席に座り、太陽を浴びながら食事した!」 Posted on 2021/05/22 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、パリに戻ってまず一番驚いたのが、7か月もの長きに渡って閉鎖されていたカフェが再開していたことだ。
びっくりなことに、一昨年の今頃と変わらない光景が広がっていて、もちろん、レストラン内での営業は認められてないのだけど、テラスは待ちわびた地元民で賑わっている。
さすがに、毎日、同じものばかり食べ続けてきた市民にとってはありがたい状況で、第二次世界大戦の解放の日を思わせるような熱狂の中にあった。
今まで店を閉鎖し感染をさせないよう頑張ってくれた飲食の方々にお礼をしないとならないから、ぼくは出来るだけ、テラスで食事をし、お金を落としたいと思っている。
食べきれないものは持って帰るから、一番高いもの、ということで普段食べないのに、ステーキを注文してみた。
※、ここの部分でご批判がでたので、訂正をします。
ステーキを食べたのは息子で、ぼくは少し貰いました。
僕が食べたのは正確にはアジの丸焼きです。アジの丸焼きはインスタにでもアップしておきますから、必要であれば、ご確認ください。
しかし、皆さんの気分を害したのであれば、ごめんなさい。
そこまで細かく説明する必要ない、と判断したのですが、朝の日記で、息子に我慢させといて、一人ステーキか、というご意見、間違いが広まるといけないので、加筆しますね。
また、日本ではステーキ、高額なイメージなので、ここも訂正しますが、これは15ユーロ、でして、普通のフランスのランチの料金です。調べてください。ここまで細かく書く必要はないと思いましたが、一応、誤解され、批判されるのは自分の生き方に反するので、訂正しておきます。

退屈日記「七か月ぶりにテラス席に座り、太陽を浴びながら食事した!」



外で食べることもだが、まず、席に座って食べるのが久しぶりなので、緊張し、わくわくした。
※ 息子い美味しいものを食べさせたかったので連れ出しました。一応、ここも追加しておきますね。

元の世界って、こんなだったっけ、と記憶をたどっては涙ぐんだ父ちゃん。
フランス政府も、七か月間、毎月、レストランに1万ユーロ、約130万円を支給し続けてきた。
店員の皆さんには失業保険が下りていたので、みんななんとかやりくり出来たのだ。
ここからは自力で稼いでいかないとならないが、しかし、どこの店員さんたちも、シェフたちも活気がある。
働くことを楽しみにしていたのが伝わってくる。ぼくの前で踊った店員もいた。当然、チップだって、はずんじゃった、笑。

退屈日記「七か月ぶりにテラス席に座り、太陽を浴びながら食事した!」



フランスの感染者は1万人ちょっとまで減じている。
少し前は欧州で最悪の一日あたり6万人まで感染者が増えた。
それを思うと、一万人は、まだ大いけど、よく頑張った数字だと思う。
ぐんぐん減ってるのは、ワクチン接種のおかげであるのは間違いない。
ぼくの若い友人たちもついに打ち始めた。
18歳以上が5月31日から一斉に打てることになったので、さらに感染減少傾向は加速する。
この勢いで行くと、フランスはあの最悪な一年を振り切り、元の世界にじわじわと戻っていくのであろう。
とはいえ、ワクチンは、今後も打ち続けていかないとならないし、変異にあわせて、新しいものを接種していく必要も出てくるだろう。
戦いはそう簡単には終わらないのが現実だろうけど、いつの日にか、新型コロナがここまで人類に脅威にはならない日が来るような、楽観的な気分も出てきた。コロナに感染しないように、上手に生き抜くすべを人類は学びつつあるのだ。

退屈日記「七か月ぶりにテラス席に座り、太陽を浴びながら食事した!」



「よかったね。おめでとう。また会えて、嬉しいよ」
とぼくがギャルソンに告げると、
「ムッシュ。ありがとう。ぼくもですよ」
と明るい返事が戻ってきた。
「人間はやっぱり、動いてないと、だめなんです。政府からの失業補償はありがたかったけれど、家にいると本当につまらない。こうやって、みんなに料理をサーブ出来る幸せ、喜び、これなんですよ。みなさんとまたお会いできて、美味しい、と喜んでもらえる当たり前の世界が戻ってきてくれて、戻ってくるのだと思えることが何より、自分が人間として感じるここ最近、一番の幸福感でした。ぼくにお金があったら、ムッシュにワインのいっぱいでもごちそうしたいんですけどね」
なんとも、泣きたくなるようないいことを言うギャルソンだろう、と思った。
フランスはカフェ文化、ギャルソンは街角のスーパースターなのだから、彼らに輝きが戻ってきたことだけでも、救いがある。

これからはじまる夏を前に、太陽の光りとともに、人々に幸せが戻ってくるのだ、と思うと、こちらも生きる希望がわいてくる。
苦しかった、2020年の3月以降のことを考えると、長い戦争がとりあえず、和平交渉で中断したのだ、という感じか。
変異株が新たな暴走を始めないよう、見守りながら、上手に人類は対処して、乗り越えていくしかない。
まずは、乾杯をしよう。ちょっとずつ乾杯をすればいい。
気分を変えながら、長い目で、このパンデミックの世界を制圧するしかないのである。
ボナペティ!



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