JINSEI STORIES
閑話休題・父ちゃんの料理教室「ライブ後に立ち寄った居酒屋で、日本酒とアジのなめろう、最高でした!」 Posted on 2024/07/31 辻 仁成 作家 パリ
ライブの後とか、日本にいると、つい、寝る前に晩酌をしたくなる、父ちゃん。
人気のない路地裏の居酒屋に入り、冷酒となめろうを注文し、英気を養うのだった。あはは。
よーし、明日も引退公演、最高の上をいってやるぞー、と決意して、日本酒をあおった、父ちゃんであった。あはは。
さて、みなさんは、鯵のなめろう、とかよく食べますかな? お酒好きにはたまらない一皿ですが、ごはんのお伴にも最適なのであーる・でこー。
ということで、日本だと春くらいから9月くらいまで手に入る小魚なのである・・・。
魚屋さんで新鮮なあじを発見したら、なめろう、ぜひ、お試しあれ!!!!
むかしむかし、下北沢に住んでいた時、本多劇場の脇の路地を入ったところに小さな居酒屋「第三新生丸」というお店があってここでよく飲んだくれていた。
大将が野球の人で、彼が握る「島寿司」は天下一品だった。
何年か前に、日本に行ったときに、ふらっと顔を出したけど、もう店はなかった。
その店がにぎわっていたころ、よく日本酒の肴に食べていたのが、「なめろう」なのだ。
新鮮なあじじゃないとダメで、この店では毎日大将の故郷のどこだったかな、八丈島だったかな、から空輸した魚を食べさせてくれていた。
とにかく鮮度が命で、漁師さんたちが釣り上げたあじの身をたたいて、味噌混ぜて食べたら、あんまりおいしくて、皿までなめたところから、なめろう、と名前が付いたのだ、とか。
そんなことを大将に教えていただいたことがあった。
ところが先日、電子書籍「オキーフの恋人、オズワルドの追憶」のリライトのために、今の下北を見ておきたいと思って、フラフラ、歩いていたら、北沢2丁目の路地に「第三新生丸」の看板を発見、・・・思わず、飛び込んだら、カウンターの中であの、あの大将が料理をしていた。
え? 生きていたじゃああああーん!!!! 笑。
思わず、目が潤んだ、父ちゃんだった。
だって、25年ぶりの再会、・・・
ということで、そこのなめろうには負けるけど、でも、ご飯がすすむ「辻家のなめろう」を今日は伝授したい。
まず、まな板を熱湯消毒かアルコールで除菌しておく。アジは三枚におろし、皮や骨をとっておく。
次にアジを細かく切り、最終的に包丁でたたく。そこにみじん切りにしたしょうがとにんにく、味噌、オリーブオイルを入れてさらにたたく。アジの形がわからなくなるくらい叩き、わずかに粘り気がでればOK。
さらに小口切りにした万能ねぎを混ぜ、皿に盛り付けてごまをかけて完成。
十分味が濃いので、醤油は使いません。必要なら、醤油などは小皿にたらし、お好みで。マヨネーズもよく合います。
材料
アジ 2尾(刺身用/3枚におろし、皮をとっておく)
しょうが 大さじ1(すりおろす)
にんにく /2片
万能ねぎ 適量
味噌 大さじ1
オリーブオイル 少々(ゴマ油でも可)
ごま 適量