JINSEI STORIES
退屈日記「二コラとマノンからかわいいケーキの写真が届いた」 Posted on 2021/04/23 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、田舎の家で目が覚めて、朝風呂につかって寛いでいたら、ピン、という着信の通知音がしたので、覗いたら、二コラとマノンからで、な、なんと、前回、うちに遊びに来た時につくってあげた辻家の幸せショートケーキを真似た、二コラ&マノンバージョンのショートケーキの写真であった。
わお、と思わず父ちゃん、風呂の中で叫んでしまった。
よくできている。しかも、円形になってる。
創意工夫というのがよくわかる。
で、比較してもらいたいので、まずはぼくがつくったオリジナルの写真から見ていただきたい。こちらです。
※冷蔵庫で冷やしているところ。
で、続いて、二コラとマノン、たぶん、マノンがほぼ作ったのだとは思うのだけど、から届いた写真はこちらである。
※これはかなり素晴らしい。オリジナルを超える出来栄えじゃあーりませんか?
素晴らしい。
ぼくが教えたことをこうやって実際の形にしてもらえると、何か、作り甲斐があるし、何か大切なものを受け渡すことが出来たと思えて嬉しいじゃあーりませんか? (そういえば、チャーリー浜さん、ご冥福をお祈りいたします。たくさん、笑わせていただきました。ごめんくさい、とか素敵過ぎました。こりゃまた、くさい・・・)
ところでこのSMSの発信元が彼らのお父さんの携帯から、というところにぼくは注目した。
前回の日記で書いた通り、二コラとマノンのご両親はコロナ離婚をされ、子供たちはフランスの法律にのっとって、双方の親の家を行き来しているのだけど、前回、ぼくが二コラのお父さんに呼び出されて打ち明けられた驚愕の事実は、新しい恋人が妊娠三か月、ということで、ぼくはいきなり重たくなり、二コラとマノンを按じたのである。
でも、今日、二人はお父さんの家にいるということになり、たぶん、まだケーキを作ってその写真を送ってくるくらいだから、その件には気が付いてないのかもしれない。
ぼくのカンだけど、マノンはもしかしたらうすうす気が付いているかもしれないのだけど、ただでさ、コロナ禍で、こういう重たい問題は子供たちには酷すぎる。
どうやって、二人に寄り添えるか考えているところだけど、どちらにしても現実は動かせないので、時間をかけながら、心を休ませてあげるしかないのだろう。
ぼくはお風呂の中で、ケーキの写真をみながら、しばらくぼんやりと考えてしまった。少しずつみんなで理解していくことしかないのかもしれない。また、いつでも遊びにおいで。ぼくのところが逃げ場所になるなら、どうぞ。今度はチョコレートケーキの作り方を教えてあげましょう!
(o^―^o)ニコ