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退屈日記「バレンタインの豆知識」 Posted on 2021/02/14 辻 仁成 作家 パリ
地震に驚かされ、コロナも収束しない。落ち着かない今日この頃だが、暦の上では、聖バレンタイン・デーということになる。
しかし、フランスのバレンタインデーは実に地味なものだ。日本では、女性が男性にチョコレートを贈る日とされているけれど、これは日本のお菓子屋さん(たしか不二家さんだったと思う)がはじめた宣伝が作り出した習慣で、日本だけのものであり、欧州の人に話すと、くすっと笑われてしまう。
ボジョレーヌーボーが解禁日を設定し、その日にワインを売りだし世界的に「ボジョレーヌーボー」という言葉を定着させたエピソードに似ている。商魂逞しい話しだけれど、それで、みんなが幸せになるなら、素敵だな、とぼくは思っている。
年齢的に、チョコレートを貰うこともなくなった、ぼくだけど、この日が来ると、微笑みを誘われてしまう。
しかし、今日、2月14日、聖バレンタイン・デーは”愛の日”として世界中でお祝いされている。
その由来は諸説あり、今のように商業的なお祝いになったのは19世紀半ば、アメリカがバレンタインカードを売り出したことがきっかけなのだとか。
所変わればバレンタインの祝い方も様々のようだ。
世界各国で”バラ”や”チョコレート”は恋人たちのポピュラーな贈り物となっているのは確かだ。
日本では、先にも書いた通り、女性から男性に愛を伝える日とされている。
しかし、日本以外の国では特にそのような決まりはなく、どちらかというと「恋人同士の日」とされているのである。
むしろ、パリでは、男性が女性に告白するのに、今日を、利用していることの方が多いかもしれない。
それでは、”ロマンチック”と定評のフランス人はどんなバレンタインを過ごすのだろう、ちょっとご紹介しよう。
フランスで「サン・ヴァランタン」と呼ばれるバレンタインデー。
だけど、正式なカトリック行事ではないため、誰もがクリスマスやイースターにかけるほどの意気込みを持っているわけではない。
フランス人はそこまでバレンタインデーを重要視していない、というのが正直なところ。
10年ほど前には特に話題に上がることさえなかったのだから、驚くね。
たしかに、ぼくが渡仏したばかりの頃のバレンタインデーは静かなものであった。
この日に何か特別なことをするとすれば、あるいは、長年連れ添った「パートナーにお花(バラ)を贈る」ことくらいであろう。
老紳士が、たぶん、奥さんへ贈るためのバラの花束を抱えて歩いている光景に出くわすたび、羨ましいなぁ、と思わされたものである。
つまり、フランスのバレンタイン・デーは、もっと大人の方たちのためのお祝の日だったのである。
フランスではお花は男性から女性に贈るものなので、必然的に男性が女性に贈ることになってるような気がする。
しかし、ここ数年ではさまざまな商店がバレンタイン商戦に乗り出しており、それに伴い、今ではプレゼント交換をするカップルも少なくない……。
男女平等の波がこんなところにも、影響を及ぼしている。
2月に入り、改めてパリの街を見渡すと、いたるところにハートでデザインされたバレンタイン広告や「AMOUR」、「LOVE」の文字が目に飛び込んでくるようになった。
聖バレンタインを利用した商魂は、ここでも、逞しい。
商業的なお祝いに反対する人も多い中、じわじわとバレンタインを祝うフランス人も増えてきているという印象を受ける。
もっとも、独り身のぼくには、ぜーんぜーん関係ない話だけど、ガールフレンドが出来たうちの息子の今日の行動が気になるところでもある。
時代の移り変わりとともに、バレンタイン・デーも様変わりしつつある。
いつの日か、フランスでも、チョコレートを女性が男性に贈る日になるかもしれない。
ぼくはチョコレートが大好きなので、自分のために買いに行くことにする。
バレンタイン・デー。還暦のオヤジであるぼくは、甘いもので、自分を少し労わる日と定めたい。
ぼくのおススメパリのチョコ、ベスト3はこちら。
1、ジャック・ジュナン
2、ユゴー・エ・ビクトール
3、ジャンポール・エヴァン