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滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」 Posted on 2021/01/28 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、英国はこの2か月で5万人が亡くなり、すでにトータルで10万人の方がこれまでに新型コロナで亡くなったことになり、ジョンソン首相がテレビで謝罪した。
ドイツは布マスクはウイルスの侵入を十分防げないとし、手術用マスク以上のマスクをつけないと外出できなくなった。
スペインは感染拡大により政府が「コントロール不可能」状態を宣言、医療が崩壊してしまった。
フランスはいよいよ3度目のロックダウンが目前かという話題が連日メディアを賑わしている。マクロン大統領のコロナ対策に不信感を抱いている国民は57%に達し、またもやロックダウンを目前に、国民の不満がさく裂気味、人々の精神状態は憔悴しきっている。
欧州のこのような悪化一途の状況に、英国発の変異株ウイルスの影響は大きい。ぼくも、もしかすると、もう罹ってしまうかもしれないという恐怖と覚悟を抱えている。
世界の一億人が今日、感染をしたと発表された。感染力は衰えていない。実に70人に1人が感染した計算になる。

滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」



どうしても感染するわけにはいかない、還暦越え父ちゃんである。
でも、ほとんど外出もしないぼくがコロナに罹る可能性は低い、とは思う。もし、罹るとすれば、それは外の世界と繋がっている息子を通して、ということになる。
そこで、ぼくは家の中でもマスクをつけるようになった。
日本でも売られている手術用マスクでもいいのだけど、それよりもさらに強力にウイルスを通さないと言われる世界最強マスクがフランスにはある。「FFP3」だ!
ネットで調べたら日本でも購入が出来る。ただし、日本では3M社のFFP3しか買えず、値段は2万4千円であった。高っ。
フランスは10枚入りで4000円前後で買える。もちろん、使い捨てには出来ない金額なので、石鹸で洗い、65度以上のお湯で5分以上熱湯食毒し、再利用している。
「N95」より呼吸が楽だし、ウイルスのフィルター率も高い。

滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」

地球カレッジ

滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」

※この写真のマスクはFFP2と呼ばれる、一つ前のヴァージョンである。

滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」



しかし、マスクだけでは不安なので、ぼくはダイソンの空気清浄機を3台買った。
いろいろと調べたところ、ウイルスも除去する、と書かれていたので、これにした。
ただ、注釈があり、以下のように書かれてあった。
コロナウイルスに有効とは書かれてない。

「* 25m³の密閉した試験空間での35分後の浮遊したウイルスへの効果であり、実使用空間や全てのウイルスでの実証結果ではありません。部屋全体にウイルスに対する効能・効果があることを示すものではありません。ご使用の状況によって効果は異なります。
試験機関:(一財)北里環境科学センター。試験方法:25m³の試験空間で日本電機工業会規格(JEM1467)の性能評価試験 にて実施。対象:浮遊したウイルス。試験機:PH01(最大風量時)。試験結果:35分後に99%捕集。 試験報告書:北生発2019_0216号。」



気休め程度にしかないらないかもしれないけど、やらないよりはやった方がいいだろうという、どこか、藁をもつかむ気持ちでの購入である。
どちらにしても乾燥が激しいフランスなので、加湿器は必要だったから、…。←言い訳。
結構な出費になった。高級ワインは暫く禁止!!!
加湿器付きの一番大きな機種は日本円で9万円ほどもした。
清水の舞台から飛び降りるような金額だったけど、感染をして入院することを考えると高くはないし、息子を疑いながら、びくびく暮らすよりはましか、…。

滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」

滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」



とりあえず、玄関(リビングルームのような空間)で、試験的に起動させてみることにした。
結構、簡単にフィルターを装着することが出来た。ボタンを押すと、静かに動き出した。
なんか、室内の滞っていた空気が、ここを通過する感に、さわやかな空気に変化しているような、気がする。うおーーー、気持ちいい。←ダイソンの回し者じゃないです。笑。
携帯と連動出来て、室内の状況を監視することも出来た。←す、すごい。
室内の空気の状態が全て遠隔監視出来る。
浮遊しているウイルスを30分ほどで99%捕集するという、そのウイルスにコロナウイルスが含まれるか、ちょっと疑問だったけど、気休め以上のものはある気がした。
すると、息子が帰ってきた。

がちゃがちゃ、と鍵の回る音がして、息子17歳がぬぼ~と顔出し、ただいま、と言った、とその瞬間、覗き込んでいた携帯画面のPM2.5、PM10などいくつかの画面のグラフが急に、レッドゾーンを超えたのである。
「ええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
思わず声が飛び出した! 
何が、起こった!!!

滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」



息子は、驚いた顔をしたぼくを怪訝な目で見ながら、風呂場に手を洗いに消えた。その次の瞬間、グラフが下がったのだった。
「あいつ、やっぱり、何か持ち込んでるな」
でも、玄関のドアが開いた瞬間に、階段の空気も一瞬室内に流れ込んだ可能性もあるので、この装置が何に反応したかは分からなかった。
けれど、ともかく、PM2.5レベルの花粉とか匂いとか何かには反応をしたのだろう。
そこにコロナウイルスが含まれるとは到底思えないけど、3台回しておけば、ある程度の効果はあるかもしれない。
FFP3をして、ダイソンの空気清浄機をフル稼働させて、とりあえず、ぼくはこの状況下のパリで、生き残りをかけている。←これで感染したら、地球はおしまい???
シャワーを浴びて戻ってきた息子がダイソン君の前に立った。
「何? これ?」
「空気清浄機」
ぼくはそう言いながら、携帯の画面をみた。
どの画面も緑の面に戻っており「きれい」と表示されている。(日本語を選択することが出来た! )

滞仏日記「変異株が怖い、父ちゃんの完全コロナ防御作戦大公開」



「見せて」
携帯を見せると、すごいね、と言った。
「浮遊しているコロナも除去してくれるの?」
「なんかね、ダイソンのHPみたら、一応、超微小粒子、ウイルス、PM0.1を除去する、みたいな図が付いてるけど、そのことは文章では書かれてなくて、ただ、0.3μmまでの粒子は割と除去できるみたい」
「新型コロナウィルスの粒子径(大きさ)はね、インフルエンザウィルスとだいたい同じ0.1μmだよ。ま、手術用マスクよりは捕集力あるんじゃない? 除去出来たら、すごいね」
相変わらずのものしり野郎であった。
「君の部屋にも小型の入れといたから。だいたい、君の部屋はコロナ以前にめっちゃギャルソン臭が酷いし」
「そうか、匂いもなくなるんだ。いいね」
「おならもだ」
ぼくらは笑いあった。
ともかく、還暦過ぎたおやじは命がけなのである。つづく。

自分流×帝京大学