JINSEI STORIES
退屈日記「雑感、秋の日に思う、尾身さんの言葉とか、いろいろなこと」 Posted on 2020/11/27 辻 仁成 作家 パリ
フランスは明日から商店が再開される。
ロックダウンは12月15日まで続くのだけど、このままじゃ、経済がダメになるのと、商店組合からも強い反発があったので緩和されることになった。
ま、めでたい。クリスマスを前に、今が商店にとっては書き入れ時(儲けが多いこと)なので、なんとかクリスマス商戦に間に合わせる形での商店再開となった。
ぼくも明日、ニコラとマノンちゃんとうちの息子のためにクリスマスプレゼントを買いに行こうと思ってる。
経済と感染抑止、なかなかバランスとるのは難しいね。
親がダメだと子供がしっかりする、というのは、まさに辻家のパターンだけど、日本とフランスもこれに当てはまる。
フランス人がダメとは言わないけど、みんな、結構、ロックダウンなのに、飲み歩いていて、昨日もまた「宴会」のお誘いがあった。
レストラン商店主からだけど、いやはや、あかんよ、と断った。
フランス政府は結構頑張ってると思う。
厳しい姿勢で最初から対応している。
子供がのほほんとしていると親が頑張るしかない。
フランス人がラテンの気質だから、どうやって彼らをなだめ、法律を守らせるか、仏政府は必死で対策を次々に繰り出している。
マクロン大統領も、日本では余り考えられないけど、しょっちゅうテレビ演説をやって、国民に直接目を見るように、カメラにがぶりつきで、熱く語り掛けている。
或る意味、フランスは政治と国民が近いのかもしれない。
それでも、(だからこそ)反発は出るし、デモもしょっちゅうおきる。
その点、日本は国民がかなり優秀で、やはり欧州に住んでると日本人すげーなーと思う一方、日本政府と国民の関係、大丈夫かな、と心配になる時もある。
経済をなんとかしなきゃ、国が亡びるという政府の気持ちもわかるので、一方的に出来の悪い親とは決めつけられないけれど、感染症の本当の怖さはここから…。
尾身会長が今日、「個人の努力のステージ過ぎた」と発言された言葉は、どちらかといえば政府よりの尾身さんの発言だけに、怖さを感じる。
誰だったかな、どこかの論説者が、GOTOトラベルと感染拡大は時期がずれてるから関係ない、と発言されていたけど、フランスで暮らしているぼくから言わせてもらうと、実はどんぴしゃなんですよ。
これは、科学者が調べればわかることだけど、感染の拡大って、必ず時期がずれて拡大していく。
フランス政府が必死だったのは感染者が一日5万人の時に、「実際には10万人以上いる」という危機感を持って行動をしたこと。(毎週100万PCR検査をやっているのだけど、一番大事なことはICUに入る人の数なのである)
このままでは集中治療室が溢れるという危機感からロックダウンに踏み切った。
その甲斐あって、昨日までに一日の感染者数を1万人ちょっとまで下げることが出来た。これも事実だ。
感染拡大の理論のようなものがあって、何もしなければ、今頃、集中治療室に一万人ほどが溢れかえっていた計算になる。
地政学的に島国の日本は感染を食い止める条件は整っている。
真面目な国民性、そして島国という二点だ。
しかし、ここから年末年始になり、当然、人が集うようになる。
気を付けない人から感染は拡大するので、尾身さんの言葉「個人の努力のステージ過ぎた」が相当に意味を持って迫ってくる。
実は夜間外出禁止令から、ロックダウンまでの流れで、フランスは相当に効果を出した。
うちの子は「ロックダウン反対派」なのだけど、この数字を見て、今は仕方ない、と思ったのか黙っている。
今日の雑感であった。ふー。