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退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」 Posted on 2020/11/08 辻 仁成 作家 パリ

 
大統領選挙、バイデンさんが、第46代大統領になることが決まりましたが、これに対してトランプ大統領が、最後まで諦めない、と抵抗する姿勢を示しています。
英国のジョンソン首相、フランスのマクロン首相はじめ世界中のトップが祝辞をおくったことから、これは世界がバイデンを支持し、アメリカと新しい世界の枠組みを作ろうという意思の表れですし、そろそろトランプさんも有終の美を飾る決断をされる時が来たのじゃないでしょうか? 
菅首相もツイッターで祝辞をおくっていますしね…。
「立つ鳥跡を濁さず」
という言葉がありますけど、あれ、いい言葉ですね。
出来れば自分も、諦める時に、濁さず飛び立ちたいものです。

退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」



話しは直接大統領選挙とは関係ないですけど、
しかし、最近つくづく実感することがあります。
やはり人間にとって言葉が大事であろう、と改めて思うとる次第です。
日々、発する言葉が大きく生涯に影響を与えているのは疑いようがありません。
周囲を見回しても、自身を省みても、言葉で失敗をし、言葉で命拾いをしてまいりました。

退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」

地球カレッジ

困ったことが起きると問題の根底には言葉の掛け違いや誤解や使い間違いがずらりと並んでおりますし、いいことが起きると当然そこには素晴らしい言葉たちが天使のように舞っておったわけです。

乱暴な言葉を吐き散らす人間の周りには暴力とか、犯罪とか、哀れなものばかりが集まっています。
これは、アメリカを見ていると、よくわかります。
暴力で解決するものはありません。
人の心は力で支配できるものじゃないのです。

美しい言葉を丁寧に伝えている人には当然、それにふさわしい幸福、穏やかな人生、周囲との調和が寄り添っているように思います。
やはり、言葉、大事なのは言動なのです。
普段の言葉遣いをちょっと気にするだけで、私たちの運気というのは上昇します。

おはよう、おやすみ、ありがとう、ごめんなさい、いってきます、おかえり、いただきます、ごちそうさまでした、さようなら、これらの何気ない日々の言葉ですが、この言葉たちを丁寧に使うだけで、いえ、むしろ自覚的に使うならば、その人生は満たされ、豊かになるはずです。
ぼくは息子に、
「挨拶をする時は、誰に対しても、相手にちゃんと聞こえるよう、心を込めて、丁寧に、そして元気を持って言いなさい」
と教えています。

退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」



返事が聞こえない時は真剣に叱ります。
すると、言ったよ、と文句が返ってくることがありますので、取っ掴まえて、それがなぜ違うのかをきちんと教えるのです。
やりすぎでしょうか? 
いいえ、これは人間が生きる上での礼儀ですから、礼儀を教えるのが親の仕事。
そこさえできればあとは必要ないくらいです。
挨拶がきちんとできれば、去り際の言葉をきちんと選べれば、徳のある人と出会うことができます。
「はじめよければ終わりよし」ということわざもあります。人生ははじまりと終わり方なのです。

退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」



「立つ鳥跡を濁さず」めの話しに戻りますけど、勝負に負けた時とか、誰かと喧嘩別れをした時とか…。
その時にこそ、その人間の器の大きさが分かるのです。
立つ場所を汚すだけ汚して、恩も友情も忘れて自分のことだけ考えて飛び立つような人間の末路は見えています。
どんな状況であろうと、最後をきちんとまとめることができた時、その人の一生が評価される。
誰に? それは天にです。
ぼくは信仰を持っていませんが、人間ですから、天に唾を吐くこともありません。
天というものは誰かでも法律でもなく自分でもない、絶対的な何かですが、人間はこの天にいつも見つめられて生きていると思うのです。
悪いことをした、と思う時がありませんか? 
それは天が教えてくれているのです。

退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」

「徳を積む」という言葉がありますが、これは正確には「隠徳を積む」が正しい。
隠徳とは「自分の善行を言いふらすのではなく隠す」こと。
人に何かをして見返りを求めるような慈善行為じゃなく、寄付をしても名前を一切あかさないようなものが陰徳といえるでしょう。
お年寄りにさっと席を譲るとか、妊婦の方の荷物を持つとか、何気ないことです。
礼を受け取らずに善行をするわけですが、でも、天はちゃんと見ています。
それでいいじゃないか、と思うことが陰徳です。
こっそりと善行を積めるような人間になりたいものです。
小生などは自慢したがりだから、なかなかこれができずに困っております。
まだまだ小さい奴です。笑。

しかし、そのような人は多いはず…。
ぼくたちは仙人ではありませんから、だめな時もしょっちゅうある。
そういう時にこそ、いい言葉を使えばいいのです。
ありがとう、と真心を込めて相手に言えた時、天は微笑むことでしょう。
一生をかけてこのことだけをやったとしても、あなたは莫大な徳を積むことになります。これが幸せにつながるのだと小生は思うのです。
一言「ありがとう」で全ては丸く収まることもあるんですよね。ありがとう。

退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」



ありがとう。
いいえ、どういたしまして。

すっきりしませんか? すがすがしくなりませんか? そういう一生を自分は心掛けたいと思います。
万が一、もめたとしても、いい言葉で乗り越えてください。
汚い言葉を使えば邪気が寄ってきます。
いい言葉を使う人には天使が集まってきます。
 

退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」



退屈日記「人生は後始末。感謝で始め、感謝で終える」

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