JINSEI STORIES
滞日本日記・最終回「長かった日本滞在、ぼくはパリに戻る機内で」 Posted on 2020/11/04 辻 仁成 作家 パリ
※この日記はパリへ戻る機内で書き、機内から配信しています。
某月某日、ついにひと月間に及ぶ長い東京滞在が終わり、ぼくはこの日記をパリへ戻るガラガラの飛行機内で書いている。乗客は20人くらいだろうか。
本当に、こうやって日仏を繋いでくださる航空会社各社の皆さん(ANA、JAL、AIRFRANCEなど)のご努力には頭が下がる。
それにしても、あまりに人のいない空港である。
コロナが長引けばもっと影響を受ける企業や国が出てくるのは間違いなく、胸が痛む。
さて、二週間の自主隔離は日記でも書いた通り、大変であった。
その間に、パリは夜間外出禁止令、テロ多発、ロックダウン、イスラム社会のフランス製品不買運動など、さらにはわが愚息の「学校変えるぞ」問題までもが勃発…。
パリに帰ると、ぼくはそのまま春に続いて二度目のロックダウン下で暮らすことになり、今年は、3,4,5、10,11,12月と制限下生活、思えば大変な一年になった。
この苦難はどうも2021年いっぱいまで続きそうな気配である。(欧州では第三波が5月に来るという説がある)
現在アメリカでは大統領選挙が行われているけれど、この結果も、この星に大きな影響を与えるのは間違いない。
しかし、どっちが負けても世界への不安定要因はぬぐえない。すんなり、両陣営敗北を認めない。とくにトランプ大統領は負けたら膨大な裁判が待っているから、支持者をあおって不穏なことが起きる可能性もある。アメリカが不安定になれ日本も、欧州もさらに厳しくなる。心配が尽きない。
*ロシア上空の太陽です。これ、太陽なんだよ! 最近は窓ガラスが飛行中暗くなるから、太陽がまるで満月みたいになるのです!窓ガラスが光を遮断するんだけど、ディマーブル・Windowというらしく、ボーイング787に装備されてます。暗くなり、眠れるわけです。おやすみなさい。笑笑。
日本人を含むアジア人はコロナ重症化しにくいという、いわゆるファクターXの要因があるようだけれど(?)、新型コロナウイルスの変異速度は速いので、日本は大丈夫、と高をくくってもいられない。
辛い自主隔離を経験した身ではあるが、厚生労働省が主導するこの日本を訪れる人々への自主隔離政策は今後も続けるべきじゃないかな、と思っている。
海外からウイルスが入り込めば、感染拡大の引き金になりかねず、日本は島国の地政学的な利点をいかし、オーストラリアのように、コロナを水際で封じ込めるコロナ鎖国を持続させる必用がある。
オリンピックの開催は楽しみだけれど、どのような要因が引き金になって感染爆発が起こるかわからないので、現実問題として、通常開催は厳しいような気がする。
ぼくが日本滞在中に思ったことは、日本人の衛生観念の高さのすばらしさで、義務じゃないのに、ほぼどこに行っても、100%の人がマスクをしていた。
仮にフランス人が日本人並みに強い衛生観念を持っていたら、ここまで感染爆発することがなかったかもしれない。
フランス人はいい意味でも、そうじゃない意味でも、個性が強く人権や自由を重んじるので、マスクを第三者のために付けるという意識が薄い。
ある意味、フランス人は世界で一番マスゲームが苦手な人々であろう。
しかし、そこが逆にフランス人の個性なのかもしれないね。
なれないマスクをつけて、コロナと戦うフランス人の頑張りようを応援していたい。
がんばれ、欧州!
ともかく、ぼくはパリに戻り、息子と二度目のロックダウンを乗り越えることになる。
ぼく自身は絶対にコロナに罹らない自信がある。
罹らないためには、感染リスクのある危険な場所には絶対近づかないことである。
それさえ守っていれば、コロナは恐れるに足らない。
なので、自分が決めたガイドラインやルールを守り続ければ、どこにいようと罹ることはない、とぼくはぼくに言い聞かせている。(あくまで個人的感想です)
長いようで短い日本滞在だったが、なかなか面白い自主隔離の経験であった。
次回来日は来年の5月30日(オーチャードホールでのワンマンライブ)ということになるけれど、いやはや、半年も先のことである。
その分、最高の一夜にしたい。
もうすぐ、息子と再会となるが、それはそれで、学校問題、テロ、コロナなど、頭の痛い問題を抱えていることもあり、気が重い帰仏となる。
でも、どのような過酷な状況であろうと、父ちゃんは常に前向きに生きるのだ!
では、また、明日の日記で!