JINSEI STORIES
退屈日記「父ちゃんが田舎に行くとき、冷蔵庫の中の食材も一緒に移動します」 Posted on 2023/03/31 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、パリとノルマンディを行ったり来たり2拠点生活を続けているのだが、ぼくといっしょにこの2拠点を移動するのが大型の保冷バックだ。
冷蔵庫に放置しておくとダメになる生野菜などを詰め込んで、ぼくは毎回、パリ-ノルマンディ間を移動しているのである。
とくに、野菜やお肉、パン、チーズや牛乳などである。時々、ワインとか・・・。今は禁酒中。笑。
たとえば、ノルマンディに1週間滞在し、パリに戻ると、野菜室の中でほとんどの野菜が、撓って、危ない感じになっている。
もちろん、煮物などにしてあまさず食べるが、やはり野菜は元気なうちに食べてあげた方がいいので、そういう野菜も含め、買ったはいいが食べきれなかったものは田舎に持って行ったり、パリに持って帰ったりしているのだ。
そうすると、移動の際に冷蔵庫を一度空にすることも出来るし、気が付かないで冷蔵庫の奥で傷み始めている食材を発見することも、まま、ある。
ということで冷蔵庫を開けると、野菜室に4分の1のキャベツを発見した。
これはパリでかなり前に買ったものだ。冷凍室に豚の三枚肉を薄切りに処理したものがあった。この2つの材料からぼくが想像した夕飯は「モダン焼き」である。
ちょうど焼きそばを作るために買った中華麺が残っていたし、卵も、お好みミックスもあった。
モダン焼きなんか、滅多に作らないけど、モダン焼きって、たまに食べたくなりません?
あとは広島風にするか、大阪風でやるか、博多風(母さん風)でやるか、なのだけど、今回は「大阪風」を採用することに・・・。あはは。
まず、お好み焼きの粉とお水で、お好み焼きのベースを作った。
そこにキャベツの粗みじん、卵1個、ネギとか生姜とかいれ、ぐるぐる混ぜるのだけど、混ぜすぎると固くなるので、ざっくりと混ぜあわせ、サラダ油をひいて、焼く。
片面を焼ているあいだに、茹でて置いた中華麺をお好きなだけ載せて、そこに薄切りにした豚肉を載せ、全体を覆っていくのである。
中火で10分ちょっと、焦げないように火を入れないといけない。
で、コテなどを利用して、おっと、今回はコテがないので、木べらとしゃもじを使って、せーの、でひっくり返した。
ちゅうちょしてはいけない。一気に、だ!!! えい!!!
アルミホイルなどで蓋をし、同じく中火で焦がさないに火を入れていくのだけれど、ここはキャベツにちゃんと火が入るようにする必要があり、時間がかかる。
いい具合でお肉がパリパリになったら、フライパンの上に大きな皿を載せ、腕力にものを言わせて、一気にひっくり返すのだ。
フライパンに卵をおとし、割って、広げたところに先のお好み焼きを滑らせ、卵が焼けるのを待って、だいたい完成になるので、お皿に戻し、ソース、マヨネーズ、かつおぶしなどでそれらしくする。
残念なことに、田舎の家には青のりと紅ショウガがなかった。
ま、でも、イイ感じに出来たので、食べられそうな分だけカットし、残ったものは冷蔵か冷凍で保管をする。
美味しそうでしょ?
禁酒中なので、仕方なく、コーラで食べたけれど、青春の味がした。
ECHOESをやっていた頃、よくツアーで広島に行ったのだが、そこに「お好み村」というところがあってそこが最高だった。
大阪だとチェーン店の千房とかね、・・・というか商店街にある大衆的なお店に飛び込んでよく食らいついていたっけ。美味かった。
博多は薄いお好み焼きが多い印象があり、とくに母さんが作るお好み焼きは薄めで、割とパリパリ、中モチモチにできてて、実は、それが一番好き。
ともかくフランスの田舎で日本を懐かしみながら、昨夜は、英気を養いました。
皆さんも、今夜あたり、ぜひ、お好み焼きをやってみてください。
ボナペティ!!!
※ これが父ちゃんのモダン焼きじゃああああああ。美味かったあああああああ。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ノルマンディは昨夜、暴風に見舞われ、停電になりました。三四郎が怖がって、大騒ぎ。眠れない夜が続いたので、今日はちょっと遅い朝です。まだ、風がかなり強いので、海の散歩はひかえないとならないかなぁ。編み物でもして、暖炉の前で静かに過ごすことにします。編み物??? セーターでも編もうかな。あはは。
さて、さて、そんな熱血父ちゃんですけれど、4月16日に「カフェ飯教室」5月7日に「敷居の低い小説教室」を開催いたします。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてください。新刊は「自分流」光文社から出ています。えへへ。
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「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022秋冬」
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