昨日、12月1日は世界エイズデー(WorldAIDSDay)であった。
WHOによって1988年、世界的レベルでのエイズまん延防止と、患者・感染者に対する差別・偏見の解消を図ることを目的で定められたのだという。
2019年末の統計では、世界に約３８００万人のエイズ陽性者がいて、新規感染者は年間１７０万人、死者も年間６９万人にのぼる。日本国内では HIV感染者とエイズ患者を合わせて約３万人いるとされている。

エイズの原因となるウイルス、HIV(ヒト免疫不全ウイルス）は１９８３年、フランス・パスツール研究所のモンタニエ博士とバレ=シヌシ博士によって発見された。
２００８年に二人はノーベル賞を受賞した。
ウイルスの発見によって「謎の病」の正体が明らかになり、診断方法や治療法の開発、感染防止対策が確立され、不治の病から慢性疾患と呼ばれるようになるまでになった。
しかし、それから４０年近くの月日が流れても、未だにエイズワクチンは見つかっていないのだ。なぜだろう？

そこで、ＤＳスタッフとも親しく、免疫予防学を学ぶ医学生のシモン・ルドヴィック君に再び登場してもらう。
※「食べて笑って目指せ免疫力アップ」という記事で様々なアドバイスをくれたり、時々、情報提供してくれる優秀な若者である。
過去記事はこちら⬇️
https://www.designstoriesinc.com/panorama/panorama-meneki/

編集部「新型コロナのパンデミック発生からわずか１年ほどで非常に有効性の高いワクチンが発表されたけど、どうしてHIVのワクチンは４０年経ってもできないの？」

シモン「ええと、そもそも、ワクチンというのは自分が持つ免疫力を強化することによってウイルスへの感染を制御するものなです」

編集部「へー。最初から知りませんでした」

シモン「ええ、知らないのが当たり前です。で、エイズウイルスには、それが通用しないとても複雑な三つの理由があるんです」

編集部「３つ？」

シモン「まず、エイズウイルスにはいくつかのサブタイプがあること。次に、エイズウイルスは非常に変異が速く、人に感染して複製を重ねるごとに遺伝子の配列が変化するという点。そして、エイズウイルスは感染者のゲノムに直接統合して持続するんですね」

編集部「・・・」

さらっと言われたけど、仏語なので、理解するまでに、というか、翻訳するまでに時間がかかってしまった。

シモン「エイズウイルスは自然免疫では排除できないんですよ」

編集部「え、なるほど。風邪は免疫でやっつけられますものね」

シモン「その通り。エイズウイルスに比べ、新型コロナウイルスは、実は、ほとんどの人が自然の免疫システムで排除することができるんです。そのため、ウイルスの断片を取って免疫系を刺激し感染を撃退するという一般的な方法でワクチンを作ることが可能なわけです」

編集部「へー、なんとなくわかるかも」

シモン「エイズワクチンによって長年行われた免疫システムの研究がこの新型コロナウイルスワクチン作成の時間短縮に役立ったようです。科学は進化しているんですよ」

編集部「じゃあ、エイズワクチンの開発は永遠にできないの？

シモン「ええ、確かに、非常に難しいとしか、現段階ではなんとも言えません。ただ、近頃では、HIVに感染しても早期発見をし、治療をすればエイズの発症をある程度防いだり、感染のリスクを減らすことが可能になってきました」

編集部「あ、それ、聞いたことあります。治療で、感染し難く出来るって、いうの」

シモン「イグザクトリー。間違いなく、エイズの研究は進歩してるんです。決して他人事と思わず、正しい知識を身に付け、予防、検査促進、差別や偏見の解消、そして近い未来エイズを終焉させられるよう協力してください」

編集部「あ、あたし？」

シモン「みんなですよ」

編集部「そうですね。先生、わかりました」

シモン「あの、ぼく、まだ学生なんです」

編集部「何年、学生やってるの？」

シモン「漫画の読み過ぎですね。アハハ」

編集部「でも、前回の免疫力アップの話しは大反響でしたから、ありがとう。役立っています」

シモン「よかった。ぼくはそんなに遠くない将来、コロナも制圧できると思っています。とはいえ、２０２２年以降だと思いますけどね」

編集部「ワクチンは、どう？」

シモン「ぼくは医学を志してる人間だから、信じていますが、実は医者たちの中にも、いろいろな意見があるのが実際です。COVID-19も風邪と同じコロナの一種ですから、まずは、免疫力をつけて、罹らないように手洗い、換気は特に注意して過ごしてください。個人的には笑うことが一番免疫力アップにはいいと信じています。だから、漫画を読むんです！」（井）