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パリ最新情報「ゴッホ、晩年の2か月に焦点をあてた傑作の数々、オルセー美術館に登場!」 Posted on 2023/10/14 Design Stories
芸術の秋にふさわしい、特別な展覧会がパリのオルセー美術館にやってきた。
タイトルは、『オーヴェル=シュル=オワーズのファン・ゴッホ、最後の数か月』(Van Gogh à Auvers-sur-Oise, les derniers mois)。
これは画家ゴッホが1890年7月に亡くなるまでの、約2か月間に描かれた名作に焦点をあてた、フランスでも初の展覧会となる。
※2023年10月3日〜2024年2月4日まで。
※特別展は稀に見る盛況ぶり。混雑を避けるため、予約が推奨されている。
オーヴェル=シュル=オワーズとはフランスの地名で、パリから北西に約30km離れたところにある。
ゴッホはこの地に住む、主治医で美術愛好家のポール・ガシェ医師を頼って1890年5月に移り住んだ。
南仏の精神病院を出たゴッホは、オーヴェル=シュル=オワーズに到着するやいなや、「空気がとてもいい感じだ」と話したそうだ。
彼はすぐさま仕事に取りかかり、午前中は屋外で絵を描き、午後は宿泊先の部屋でキャンバスに向かう日々を送ったという。
ゴッホがオーヴェル=シュル=オワーズに到着したのは5月20日だった。
それから2か月と7日後の7月27日には自ら命を絶ってしまうのだが、その短い間に描かれた絵画は74点、デッサンは33点にもなる。
今回の特別展では、そのうちの絵画40点、デッサン20点が集められた。
※ゴッホが実際に使っていたパレット。
わずか2か月あまりの間に74もの絵画を残したゴッホ。
単純に計算すれば、1日一枚以上の作品を描いていたということになる。
実際、特別展では絵画のタイトルと、(描かれた)日付も合わせて紹介されていた。
しかし日付を追って観ていると、同じ表情のものが一つとしてない。
ゴッホ最晩年、感情の大きな揺れ動きがその筆運びにも表れているようだった。
※亡くなる2週間前に描かれた名作、『カラスのいる麦畑(Champ de blé aux corbeaux)』。ゴッホはこの時代に二重正方形のキャンバス画を13枚描いているが、そのうちの11点がオルセー美術館に集められた。
オーヴェル=シュル=オワーズという小さな村でモデルを見つけるのは困難だったという。
しかし幸い、宿屋の娘アデリーヌとガシェ医師の娘マルグリットが、ゴッホのためにとモデルになってくれた。
風景画の合間に肖像画を精力的に描いたことについては、ゴッホは「絵画の中で唯一、私を最も深く感動させ、無限を感じさせてくれるものだったから」と語ったそうだ。
※宿屋の娘『アデリーヌ・ラヴー(Adeline Ravoux)』
※オーヴェル=シュル=オワーズ、絵画とのコラボマップ。ゴッホはこの地の麦畑、教会、庭園風景などを描いた。
今回はフランス初公開となる、ゴッホ最後の作品『木の根と幹(Racines d’arbres)』も展示されていた。
これは1890年7月27日、ゴッホが自らに銃を向けたその日に描かれたものである。(二日後の29日に死去)
なおファン・ゴッホ研究所はオーヴェル=シュル=オワーズの自治体と協力し、モデルとなった場所を特定、現在は保護地区とされている。
※『木の根と幹(Racines d’arbres)』
※オーヴェル=シュル=オワーズ時代、ゴッホの作品をテーマにした映画『夢』(黒澤明監督)の紹介もあった。
ゴッホは、たった2か月と9日しかオーヴェル=シュル=オワーズに滞在していなかった。
しかしその期間は、ゴッホの「最も多作な時代」とも言われている。
彼はこの地で亡くなってしまったが、最晩年の作品には驚くべきエネルギーがあり、自然への賛美が強く表れていたことが印象的だった。(オ)