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パリ最新情報「妊婦とコロナワクチン。さまざまな意見飛び交う」 Posted on 2021/07/20 Design Stories  

フランスでは、4月から妊娠中期(16週)以降の妊婦へのワクチン接種を行なっているが、ワクチン接種による自身の体や胎児への影響を心配する妊婦は少なくない。

妊娠中、コロナに感染すると重症化リスクが高くなるのだろうか?

WHOは、妊娠中の女性は体や免疫システムが変化するため、呼吸器感染症にかかるリスクが高くなると指摘している。フランス国立医薬品・健康製品安全庁(ANSM)によると、肥満、高血圧、糖尿病など持病を持っている女性は、特に妊娠後期にコロナ重症化するリスクが高くなるという。昨年4月に発表された科学雑誌「JAMA Pediatrics」の調査によると、妊娠中にコロナ陽性となった女性(妊婦2130人を対象)は、超早産の原因の一つとなる子癇前症(フランスでは超早産の3分の1の原因となっている)などの妊婦特有の合併症を発症するリスクが高くなると示唆されている。

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では、妊娠中のワクチン接種は推奨されているのだろうか?

現在フランスでは、妊娠16週目以降の妊婦に対し、ファイザー、もしくはモデルナ社のRNAメッセンジャーワクチンを接種している。
パリ市のピチエ・サルペトリエール病院の医師は、他のワクチンや薬剤と同じくこのワクチンも妊娠初期は避けたい。妊娠前、妊娠を計画した段階で打っておくのがベストだ、と語った。フランスでは、もし1回目の接種後に妊娠した場合、2回目の接種を3週間延ばしている。(1回目の接種後なんらかの副反応があった場合は2回目の接種は出産後)
フランス国立保健医学研究所(Inserm)によると、ワクチンは胎盤を通過するため、ワクチン効果が新生児にも届くのではないかとの見解を示しており、アメリカの医学雑誌The New England Journal of Medicineの調査ではワクチン(ファイザー、モデルナ、ジャンセン)による胚や胎児の発育に対する有害な影響は報告されていいないという。



フランスは8月より、医療機関などで衛生パスポートの提示が求められる。ワクチン接種が推奨されていない妊娠初期の妊婦に対し、特別な待遇を取るのかどうかが議論されている。
妊娠初期の妊婦は様々な検査で医療機関に通う機会も増えるが、その度に陰性証明を取らなければならないのは、体力的、精神的にかなり厳しい。フランス政府は妊娠初期の妊婦に対し特別なパスを作る計画をしているようだ。

産婦人科医のジャッキー・ニザール医師は、「妊娠初期でもワクチンを接種したいという女性も多い。実際、妊娠していると気づかずに妊娠初期にワクチンを接種した人も多くいるが、特に大きなリスクは報告されていない。大きな第4波が来た場合は、妊娠初期の妊婦にもワクチン接種を推奨することになるだろう」と語った。

ただでさえナイーブになる妊娠期。コロナにかかるリスク、ワクチン接種への不安・・・コロナ禍の妊娠、出産はより一層女性に負担がかかる。
1日も早く、心身ともに妊婦をサポートできる環境が整ってほしい。(み)

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