欧州最新情報

パリ最新情報「大きな一日。EU各国でワクチンの接種が開始された」 Posted on 2020/12/28 Design Stories  

ラジオをつけて音楽を聴いていたら、不意にニュースが流れ始めた。
しかも、ジャポンという響きが聞こえたので、慌ててボリュームを大きくすると、「日本政府は28日から来年1月末まで全世界からの外国人の入国を禁止する」というニュースであった。
(日本人や在留資格がある外国人は、帰国が許可される)
司会者は、世界は再び門を閉め始めた。いつまでこの扉は閉ざされ続けるのか、私たちはまだ誰も答えを持っていない、と呟いた。

 



そして、フランスでは今日(27日)からCovid-19のワクチン接種が始まった。(ワクチンは−80度のスーパー冷凍庫から取り出した後、2から8度で2週間保持できるということだ)
優先的に接種されるのは老人介護施設で集団生活を余儀なくされているお年寄りたち、そして、医療従事者ということになる。
フランスで第一人目となったのは、老人介護施設に暮らす78歳の女性であった。
「痛くないわ!ワクチン接種一人目となってとても誇りに思う」
と彼女をやや興奮した面持ちでインタビューに答えていた。

パリ最新情報「大きな一日。EU各国でワクチンの接種が開始された」



医療従事者で初めてワクチン接種をしたのは65歳の医師であった。
「私にとっては何でもない1日だけれど、このパンデミックで命を失った人々を想う、特に亡くなった同僚、医療従事者のことを思い出すと、とても大きな1日になった」
彼は接種後、このように発言した。
「アームストロングが月に行った時の言葉、これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である、を彷彿とさせる」と、その医師の同僚が番組で彼にかわり、語っていた。医師たちにとって、不安はありながらも、科学の力を借りることへの期待も大きいのではないか、…。

パリ最新情報「大きな一日。EU各国でワクチンの接種が開始された」



EU諸国の一部で、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンの接種が始まっている。
ドイツでも介護施設の高齢者を対象に開始され、ハンガリーでは病院の医師らがワクチンを接種した。
イタリア、スペイン、スロヴァキアなどEUの複数の国がワクチンの接種を開始した。そういう意味でも「大きな一日」である。
欧州委員会のライエン委員長は「団結のための感動的な瞬間」と語り、マクロン大統領は「我々はウイルスに対する新しい武器を手に入れた、ワクチンだ。力を合わせよう」とツイートした。
マクロン大統領はこのワクチン接種に強い可能性を感じているようで、その後も、「ワクチン接種は全て国の負担で行う。我が国の保険システムに誇りを持とう」「ワクチン接種は義務ではありませんが、我が国の研究者と医師を信頼しよう」などとツイート連投し、国民への理解と協力を求めた。
コロナとの闘いの中心的人物であったフランス保健相のオリヴィエ・ヴェラン氏は「半年前、こんなに早くワクチンができると言われても信じなかっただろう」と演説の途中、感慨ぶかげに語っていた。



このパンデミックの到来に、世界中の政府が翻弄をされ、翻弄され続けている。失敗をすれば批判の矢面に立たされてきたリーダーたちにとってワクチンは確かに救世主なのであろう。
しかし、まだ、結論は出ていない。
世界の感染状況は史上最悪の状況が続いている。
アメリカのファウチ博士は「アメリカのピークはこれからやってくる」と発言しているし、フランスも科学者たちが「冬休み明けには第3回目のロックダウンの可能性がある」と忠告をしている。イスラエルでは今日からすでに三回目のロックダウンに突入。
変異株の出現で、ワクチンに新たな翳りも見え隠れしているし、どのくらいの人々がワクチンを接種できるかも次に重要となる。
このような状況下で、今日は欧州がこの感染症の時代を潜り抜けるその第一日目になるのか、日本や世界がこの絶望から立ち直れる一つのきっかけになるのか、ワクチンを接種した人たちからの希望の声を待ちたい。(上)

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