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パリ最新情報「ダサくて可愛い『アグリー・セーター』が復活、フランスで選手権も」 Posted on 2022/12/06 Design Stories
どのセーターが一番ユニークか?を決める「アグリー・セーター選手権」が、フランスのいたる所で開催されている。
アグリー・セーターとは、クリスマス特有の柄を過剰なまでに編み込んだ、少しダサくて可愛いセーターのこと。
フランスでは「Le pull moche de Noël(ル・ピュル・モッシュ・ド・ノエル)」と呼ばれており、2000年代の流行がここにきて復活しつつある。
「すでに古いジョークだ!」という人も確かにいる。
しかしながら終わらないコロナ禍、インフレ、電力不足など暗いニュースの多いフランスでは、憂鬱な気分を吹き飛ばそうとこのイベントが年々盛り上がりを見せているということだ。
もともとアグリー・セーターは、1970年代後半にアグリー・クリスマスセーター・カンパニーという会社によって考案された。
これは、欧米および欧州の一定層(だいたい現在の50代〜70代)のあいだで記憶に残る、とある象徴的なプレゼントに回帰している。
彼らの多くはクリスマスシーズンになると、おばあちゃんから特製の手編みセーターが届くことが多かった。
そこには雪だるまやトナカイが大きく編み込まれており、色もクリスマスを象徴する赤や緑が多い。
そのためシーズン中は恥ずかしい気持ちを忍びながら、おばあちゃんのためを思ってセーターを着ていた…というものだ。
今では手編みセーター自体も少なくなり、プレゼントとして贈ることももらうこともほとんどない。
ただフランスでは、やや自嘲気味ではあるが懐かしい記憶を呼び覚ますとして、「アグリー・セーター世界選手権」が2017年よりちょっとしたブームになっている。
南仏アルビの町では、12月3日に第6回アグリー・セーター世界選手権が開かれ、約100人の参加者が集まった。
初回の2017年には全国的なニュースにもなり大成功を収めたといい、年々クオリティが高まっていることでも話題を呼んでいる。
参加条件は、面白いセーターを着こなしていれば誰でもOK。
中にはこの大会のために1年も前から準備をしてきた高校生チームやお父さんチームもいて、LED電球やトナカイのぬいぐるみを縫い込んだものなど、オリジナリティに溢れたセーターがたくさん出揃ったという。
お金をかけないヴィンテージものやハンドメイドであれば尚更よいとのことで、参加者の中には、何十年も前に本当におばあちゃんにプレゼントされたセーターをリメイクして披露する人もいた。
最近ではファストファッションをはじめ、仏ラグジュアリーブランドまでもが販売するようになったアグリー・セーターだが、フランスでは、新しいものではなくヴィンテージであればあるほど良い!といった傾向がある。
なお、パリ近郊の副都心ラ・デファンスでは昨年よりアグリー・セーター選手権が開催されており、ルーアン地方や、ピレネー山脈近くの町ローラゲスではこの12月に初開催が予定されている。
現在フランスはインフレを始めとした、複雑で終わりの見えない問題を多く抱えている。
そのためか、こうしてお金をかけずに済む、大人たちが本気で楽しめるイベントがどんどん増えてきているように思う。
いずれにしろヴィンテージで60年代に回帰する、というのが2022年クリスマスの流行のようだ。(オ)