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パリ最新情報「フランス最高裁判所、トランスジェンダーの生徒が学校で希望する名前の使用を容認」 Posted on 2022/10/05 Design Stories  

 
9月28日、フランスの最高裁判所は、トランスジェンダーの生徒が学校で慣習的なファーストネームを使用することを正式に認めた。
これによって現在フランス国内で約132,000人いるとされるトランスジェンダーの子供たちは、学校生活において希望する名前で呼ばれることが可能になる。

これは一年前の2021年9月29日に、仏文科省が「学校における性同一性問題へのよりよい配慮のために」と題する書簡を最高裁判所に提出したことから始まった。
書簡の内容は、学校に対し、生徒の希望したファーストネームが尊重されることを保証するよう求めるとともに、生徒の服装の選択や性別の表現法も尊重され、差別や嫌がらせに対抗するための策を講じる必要性を主張したものである。
 



 
この一年の間で議論されていたのは、書簡が「市民は出生証明書に記載された以外の名前または姓を名乗ってはならない」という1794年に制定されたフランスの法律に背くかどうかについてだった。
しかしフランス最高裁判所は「法律に違反していない」と最終的に判断。
彼らが学校生活で希望する名前の使用は問題ないとする一方、バカロレア(高校教育の修了を認証する国家試験)のみは出生証明書に記載されてある正式名を使用する必要があるとした。
 

パリ最新情報「フランス最高裁判所、トランスジェンダーの生徒が学校で希望する名前の使用を容認」

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これにより、トランスジェンダーの子供たちは希望するファーストネームを学校内で自由に名乗ることができる。
対象は多岐にわたり、口頭での呼び名のほか食堂カード、成績表といった記述用にも採用される。

フランスにおけるさまざまな研究や調査では、トランスジェンダーの子供たちは学校において否定的な経験を受けるリスクが高いことが立証されていた。
また仏文科省が書簡を提出するきっかけとなった事件には一昨年前のトランスジェンダーの高校生の自死が関係している。
その理由は学生が通う高校においてスカートの着用を禁じられたことを苦にしたものであったため、教育関係者や仏文科省に大きな打撃を与えた。

そのため仏文科省は今回、「生徒のアイデンティティは、大人や他生徒の裁量に委ねられてはならない」と強調し、最高裁判所側も「包括的な学校教育に貢献したい」と述べている。
 

パリ最新情報「フランス最高裁判所、トランスジェンダーの生徒が学校で希望する名前の使用を容認」



 
今回の決定を受け、仏メディアは「トランスジェンダーの子供たちの権利のために大きな一歩を踏み出した」と報道。
氏名を公的に変更するには多大な時間がかかることも挙げ、トランスアイデンティティは大人だけの問題ではないと言及した。

この度はファーストネームの自由選択に関する部分のみが争点となったが、仏文科省は今後、トランスジェンダーの子供たちの服装選択、トイレ、更衣室、学生寮の使用法についても論争していく構えだ。
また文科大臣のジャン=ミシェル・ブランケル氏は「生徒たちへの配慮として、診断書の提出義務などを条件とすべきではない」とし、我々は子供たちにさまざまな可能性を与える義務があると表明している。(こ)
 

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