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パリ最新情報「女性ポートレートオンリーの展覧会。売り上げ金はアーチストの願う先へ寄付」 Posted on 2021/06/05 Design Stories  

 
女優のペネロップ・クルーズ、ジュリアン・ムーア、フランスといえばのカトリーヌ・ドヌーブ、加えてトップモデルのアドワ・アボワ、映画監督のジェーヌ・カンピオン、デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド、そして米国副大統領のカマラ・ハリス、モナコのシャルレーヌ公貴…。
国籍は様々だが、世界で活躍する上記の彼女たちには、“生き生きとした美しさ”だけではない共通点がある。
そしてその理由によって、現在世界的に活躍するアーチストたちから選ばれて、ポートレートが描かれた。
この他にも、30カ国にその小説が訳されている作家のチママンダ・ンゴ・ズィ・アディーチェ、ジャーナリストでエコロジストのクレール・ヌヴィアン、哲学者で精神分析学者のシンシア・フルーリー等々がいる。(彼女たちが誰だかご存知なく、もし時間が許せば、ぜひ彼女たちの名を検索してみてください)。

この女性たちの数=ポートレートの数は、全部で26。
それが一同に、美しい暗闇に輝くようにして集められた展覧会が、左岸のセーヌ河岸にあるラ・モネ・ド・パリ(フランス金融機関la Monnaie de Paris)で、6月4日から7月4日まで開かれている。
タイトルは、Togeth’HER。あえて日本語に訳せば「共に」。しかしお気づきのようにHER(彼女)がポイントである。
 

パリ最新情報「女性ポートレートオンリーの展覧会。売り上げ金はアーチストの願う先へ寄付」



 
女性の地位向上が何十年もの歴史を重ね努力されてきたものであり、そしてセクハラという言葉が一般化して目に見えるそれが少なくなったとしても、近年のネットでの#metoo (性暴力被害者がネット上でつけるタグ)の世界的な爆発的共有率でも分かるように、女性たちの女性であるからの日常を生きる中での悔しさ悲しさ怒りは、いまだ無くなることがない。
しかしそれらに対して、うつむいたり見ないふりをするのではなく、前向きに強くしなやかに、様々なかたちで活動し世界を少しずつ動かしている女性たちが、上記に挙げた彼女たち、HER。
もちろん26人に収まらない女性たちが同様に行動をしているが、今回はこの企画に賛同した26人のアーチストが一人ずつ自ら選んだので、その一握りの26人となり、展示の数も珠玉の26点となっている。
 

パリ最新情報「女性ポートレートオンリーの展覧会。売り上げ金はアーチストの願う先へ寄付」



 
それら、彼女たちのポートレートを表情のみならずイメージ等でも現したアーチストとは、ジャン・ミッシエル・オトニエルやジョアンナ・バスコンセウロス、オリビエ・マスモンテイル等々。
彼らは、この展覧会の主旨に賛同して、その絵画を提供する。
絵画はオークションにかけられて、その売り上げ金額は、各々アーチストが自らが選んだ先へ寄付される。

その先はアーチストの思いに任され、例えば、家庭内暴力から子供を守るポルトガルのアソシエーションへ、昨年のベイルートの大爆発による被害者へ、ベトナムの貧困層の社会活動施設へ、癌患者へのエステのアソシエーションへ、シリアやイラク市民へのメディカルヘルプへ、フランスの視覚障害者施設へ、ベナンの孤児施設へ、フランスの暴力にあった女性を保護する施設へ、赤十字へ。
展覧会の総称はArtistes à la une (アーチスト・ア・ラ・ユン)Togeth’HER 。主催はマダムフィガロ。
アートをオークションで買うのはハイクラスな人々だが、貧富の差が広がると言われる世界に、まだまだ希望が持てることを思わせてくれる有意義な展覧会だ。(ア)
 

パリ最新情報「女性ポートレートオンリーの展覧会。売り上げ金はアーチストの願う先へ寄付」

 

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