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パリ最新情報「TIkTokが世界の政府スマホから消えていく。なぜ?」 Posted on 2023/03/17 Design Stories
3月16日、イギリスが政府関係者の公用端末で動画投稿アプリ「TIkTok」の使用を “即座に” 禁止することを発表し、すでに禁止している米国、カナダ、日本、EUなどに続いた。ちなみに、台湾とインドではアプリ自体が禁止されている。
フランスでは、2月28日より政府公用端末での同アプリ使用が禁止されている。これまで、マクロン大統領を始め、各大臣がTikTokを利用して若者に歩み寄っている姿が話題になっていたが、なぜ急に世界の政府はTikTokを警戒し始めたのか?
その理由は、ずばり「セキュリティ上の懸念」。
運営する中国企業バイトダンス社が世界中のTikTokユーザーの個人情報を収集し、中国当局に渡しているという疑惑が生まれたためである。
まず、TikTokは他のソーシャルネットワークと同様に、ユーザーに関する多くの情報(閲覧履歴、会話、興味、位置情報、連絡先リスト、携帯電話のカメラやマイク)にアクセスすることができる。しかし、FacebookやTwitterとの違いは、中国企業であるTikTokは、他の中国企業と同じく、中国政府に有益になるよう働かなければならない。実際にバイトダンス社は、フランス人を含む欧米ユーザーの一部のデータが中国からアクセス可能であることを認めており(どのデータかの特定には同意しなかった)、これが、世界に散らばる10億人以上のユーザー(フランスでは1千500万人)に対する大規模なスパイ活動であるとの懸念を抱かせたのだ。バイトダンス社はスパイ行為を否定し、いかなる調査にも協力する、と、透明性をアピールしている。
スパイ疑惑以外に、TikTokが若者に向けて発信するコンテンツ(フェイクニュースなど)についての批判もある。中国では、政府がTikTokの動画配信を規制し、利用時間を制限しているが、もちろん、欧米版TikTokに制限はない。これまでにない割合でユーザーを集め、若者がTikTokに費やす時間が、Instagramの2倍にも達しているというのだ。
今どきのティーンネージャーはテレビや新聞からではなく、このTikTokから日々のニュースを得ているという。ここフランスでも、若者の日々の会話からTikTok由来の話題が出ないことはないだろう。新しいレシピや話題のレストラン、ゴシップからロシア・ウクライナ戦争まで、知識の情報源は「TikTok」だということが多い。イギリスが行った若者への調査では、情報源はTikTokだがその情報を全部信用しているかという質問に「イエス」と答えたのは39%に留まったという。しかし、その中毒性と中には過激な映像や真実と嘘の判断が難しいものもあり、ナイーブなティーンにとっては非常に危険なものになり得ると感じる。
アメリカでは政府だけでなく、アプリ自体を全面的に禁止する動きになっているようだが、フランスが禁止するかどうかは、EU全体での取り決めとなるだろう。(その場合、新しくスマホにTikTokアプリをインストールできなくし、次第にフランス語の投稿が減っていき、見る人が減少していくという手段しかないようだ。)
あっという間に世界中に広まったTikTok。今後、世界がどのような動きをするか注目が集まっている。