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パリ最新情報「世界遺産サン・ジャックの塔、期間限定で公開!パリの絶景をお届け」 Posted on 2022/08/23 Design Stories  

 
パリ市役所付近を歩いていると、白い巨塔がポツンと立っていることに気づく。
この辺りのランドマークタワーと呼び声が高い、サン・ジャックの塔だ。
塔の歴史は中世から始まっている。
1523年に完成したというから、約500年も同じ地に存在していることになる。
実は、パリ市はこの塔の内部を夏季のみ限定で公開しており、10歳以上であれば誰でも頂上まで登ることができる。
 

パリ最新情報「世界遺産サン・ジャックの塔、期間限定で公開!パリの絶景をお届け」



 
修復工事などで長らく閉鎖されていたものの、2021年にはようやく一般向けのガイドツアーが再開となった。
パリには観光名所が多いため、サン・ジャックの塔は他に比べれば知名度が低いかもしれない。
ただノートルダム大聖堂が閉ざされている今、この塔に集まる人は徐々に増えつつある。
というのも、頂上からの眺めは絶景中の絶景、パリを360度のパノラマで見渡すことができるためだ。
高い建物は市内にもいくつかあるが、こうして世界遺産から眺めるパリは格別なものがある。
 

パリ最新情報「世界遺産サン・ジャックの塔、期間限定で公開!パリの絶景をお届け」

※19世紀、気象台だった頃の塔の内部

 
もともとサン・ジャックの塔は、16世紀に勢力を誇ったブッシュリー(肉屋)組合が建てた教会の鐘楼であったという。
しかし教会本体はフランス革命時に破壊され、1797年には採石場として売られてしまう。
鐘楼部分だけがかろうじて残り、1836年にはパリ市が購入・修復を施した。
その後はパリの気象観測台にもなっていて、塔の内部には気象学者たちが暮らした貴重な小部屋もそのまま残されている。
 

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パリ最新情報「世界遺産サン・ジャックの塔、期間限定で公開!パリの絶景をお届け」

 
サン・ジャックの塔は全長62メートル、現代で言うとだいたい17階建てのビルに相当する。
頂上まで辿り着くには、小さな螺旋階段を300段も登らなくてはならない。
そのためオフィシャルサイトには10歳以上であるほか、心臓の弱い人はNGとある。
ただ階段があまりに急で狭いため、閉所恐怖症や高所恐怖症の人も気を付けた方が良いかもしれない。
 

パリ最新情報「世界遺産サン・ジャックの塔、期間限定で公開!パリの絶景をお届け」

 
息切れしながら登ると、そこには期待以上の絶景が待ち構えていた。
セーヌ川をはじめ、エッフェル塔、凱旋門、モンマルトルといったありとあらゆるパリの名所が一望できる。
パリの屋根はどこまでも灰色で、かくいうサン・ジャックの屋根も灰色の亜鉛素材でできている。
ところどころ変色しているものの、その風合いはかえって歴史の重みを感じさせた。
 

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頂上には、聖書の福音史家のシンボル(ライオン、雄牛、鷲、人間)のほか、ガーゴイルたちがパリの街を見守るように座っている。
ガイドさんによれば、西洋建築におけるガーゴイルは本来、雨樋(雨水の排出口)の役割を果たしていたそうだ。
 

パリ最新情報「世界遺産サン・ジャックの塔、期間限定で公開!パリの絶景をお届け」

※写真右下が雨樋のガーゴイル

 
またガーゴイルの語源はラテン語であって、水が流れるときの「ゴボゴボ」という擬音を表すものだったという。
時代の流れと共に洗練されたデザインに変わり、ノートルダム寺院のガーゴイルは「大聖堂から外部へ、罪を吐き出している状況を表している」とも言われている。
中世につくられた石造だが、今ではそれぞれ避雷針の役割を果たしているというのが印象的だった。
 

パリ最新情報「世界遺産サン・ジャックの塔、期間限定で公開!パリの絶景をお届け」

 
サン・ジャックの塔は、1998年にユネスコ世界遺産に登録された。
パリの観光名所が多すぎるため後回しにされがちな建物ではあるが、頂上からの風景は一見の価値がある。
日没時間がもう少し早くなれば、ここから見えるパリの夕日は素晴らしいものとなるだろう。

ガイド付きツアーは普段は仏語、場合によっては臨機応変に英語でも対応しているとのこと。
今年の期間は6月10日から11月6日までで、一人につき12ユーロとなっている。
これから毎年開催されるようなので、その場合は気温の低い秋口、やはり夕日を目指して登るのが良いかもしれない。(オ)
 

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