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パリ最新情報「もう手遅れ? 人命と経済の選択を強いられるフランス」 Posted on 2020/10/11 Design Stories
1日の新規感染者が2万人を超えたと思ったら、その翌日(10月10日)には26896人の感染者を出してしまったフランス。
感染が拡大する地域でバーやジムの閉鎖など、さまざまな制限措置をとり始めて1週間が経とうとしているが、果たしてこの制限だけで十分なのか、感染者数はどこまで上昇するのか・・・。これからの3週間はかなり厳しい日々となる、コントロール不可能な状態、と専門家、医療関係者の声のトーンは一気に変わった。
「はっきり言って、フランスはロックダウン解除に失敗した」
とは、ロックダウン中、毎晩というほどテレビで状況説明をしていたとある医師。
新規感染者が2000人、3000人になった時点で今日のこの数字は十分想像できたのに、なぜ1万5千人になるまで何もしなかったのか、と怒りを顕にしていた。
コロナ禍で浮き彫りになった予算、人員不足に苦しむ医療機関と政府の間にある溝は深く、関係は決して良好とは言えない。フランスの医療従事者の40%は離職を望んでおり、57%がバーンアウト(燃え尽き症候群)であると答えている。
しかも、コロナ陽性(無症状)である医療従事者が、人員確保のために現場に出ている、出なければならないという現状も表に出た。そうでもしなければ、病院や救急を閉めなければならないのだという。政府もその現状を容認している。
今回、新たに4000床を確保すると発表した政府に対し、医療関係者は「病床だけあっても何の意味もない」と怒りは頂点に達しているようだ。
現在、パリのコロナ患者の病床占有率は40%を超え、パリ郊外では58%にまで上っている地区もある。
60%というのが一つの目安であるとすれば、あと数日もすれば病床不足、そして医療従事者不足が始まる。
ウイルスが変異し、弱毒化しているのではという質問に感染症医は、「ウイルスは変わっていない、感染者の増加につれて同じ比率で重症者は出ているし、重症者が増えた後、死者も増えていく」と答えた。
この状況が続けば、再び3月、4月の状況になることは間違い無いようだ。
来週末からトゥッサン(万聖節)と呼ばれる秋休みが始まる。日本でいうお盆のような休みであり、先祖のお墓参りをし、家族で集まるのが一般的な過ごし方だ。
政府は帰省で移動する事などに対して規制はしなかったが、コロナ感染のクラスターの多くは会社、家族での集まり、結婚式やお葬式なので、一人ひとりが責任ある行動を取れなければ、休み明けにはひどい状態になる、と専門家は繰り返していた。
ヨーロッパで一番の落第生となってしまったフランス。
ロックダウン解除後、経済を最優先してきた政府であるが、今、人命か、経済か、という大きな選択を迫られている。