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パリ最新情報「郵便局×手巻き寿司バー、異色のコラボ誕生!盛り上がるパリ1区」 Posted on 2022/01/25 Design Stories
パリ1区の快進撃が止まらない。
昨年5月に開館した美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」、6月に再オープンとなったデパート「ラ・サマリテーヌ」に続き、今年1月18日に「ラポスト・ドゥ・ルーブル」が同1区に立て続けに誕生したのだ。
「ラポスト・ドゥ・ルーブル」とはパリ中央郵便局のことで、1886年に建設された、第3共和政時代を代表する建物。フランスらしからぬ年中無休・24時間営業というスタイルでパリの郵便事情を担ってきた存在だ。
2015年にリニューアルのため閉鎖され、約6年半にわたって改装工事が進められていた。
電報や郵便の黄金時代を象徴するパリの「ラポスト・ドゥ・ルーブル」。
1月18日に無事に再オープンを果たしたのだが、話題となったのはそれが「ただの郵便局ではない」ということ。
3万2000平方メートルという広大な敷地の中に、郵便局以外にも13のショップや飲食店が入居し、5つ星ホテル「マダム・レーヴ」もオープンした。
この建物には歴史的な価値があるものの、インターネット時代を迎えて郵便の需要は減っていた。しかしそれを「無用の長物」と化さないよう、景観はそのままに現代風に再開発したというのである。
太陽光発電、屋上菜園、ルーフトップバー、コワーキングスペースなどなど、パリの「旬」を全て集結させた新スポットだが、驚いたのはその中に和食レストランが2つも入ったことだ。
ひとつは、5つ星ホテル「マダム・レーヴ」の最上階に位置する「La Plume(ラ・プリュム)」。フレンチ×和食のフュージョン料理が楽しめるほか、パリを一望できるリュクスさが強みだという。
そしてもうひとつは、1階の道路に面した「Doki Doki(ドキドキ)」という名の、パリ初の手巻き寿司バーである。
ラーメン、餃子、BENTO(弁当)、おにぎりと、これらの日本食はすでに市民権を得たようなものだ。しかし手巻き寿司バーというのは、これまでありそうでなかった発想で目新しい。
「日出ずる国への旅」というコンセプトのもと、“おまかせ”流で手巻き寿司をふるまう「Doki Doki(ドキドキ)」。
3ロール〜6ロールのセットでメニューが展開され、サイドには枝豆、きゅうりの叩きといったおつまみも。
使用する海苔は有明産、米は日本から直輸入といった徹底ぶりで、そのクオリティは我々が食す「手巻き寿司」と変わらない。
舌の肥えたパリジャンからの口コミなのか、オープン数日目にも関わらず「Doki Doki(ドキドキ)」は行列ができるほどの盛況ぶりであった。
聞けば、オーナーシェフのアンドレさんは過去に日本の鎌倉に住んでいたのだとか。
「パリパリの海苔、丁度よい温度のご飯、そういった日本のクオリティをそのまま表現しています」と、日本の手巻き寿司文化をパリの一等地で再現する。
最近では、以前日本に住んでいたフランス人が「日本の味をパリで正確に再現する」という現象が目立って増えてきた。
日本人が和食レストランをパリで展開するのではなく、フランス人が日本の味を、パリのエッセンスを保ちながら展開する、そのような風潮がロックダウン明けから続いているのだ。
気軽に旅行できない時代だが、パリジャンの味覚はどんどん進化し、ごまかしが効かないものとなっている。
「ラポスト・ドゥ・ルーブル」の周囲はパリきってのオフィス街であり、さほど遠くないところにはルーブル美術館やポンピドゥーセンターといった偉大な美術館も存在する。
この1週間足らずで「Doki Doki(ドキドキ)」も多数のメディアに取り上げられ、郵便局とともに良いスタートを切ったようだ。
これからのパリは観光客だけでなく、住民の心も捉えることが使命となるのだろう。(ル)