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パリ最新情報「時間がずれるサマータイム、省エネのメリットと心身へのデメリット」 Posted on 2023/03/24 Design Stories  

 
3月26日(日)の午前2時、フランスはサマータイムに切り替わる。
これは北米の一部やヨーロッパ各国でも導入されている制度で、日の長い季節に時間を1時間早め、日光を使って電気を節約しようという取り組みになっている。
つまり26日の午前2時には、いきなり午前3時にジャンプすることになり、日本との時差も8時間から7時間へと切り替わる。
また同地域では逆の「冬時間」もあり、10月の最終日曜日にはサマータイムから1時間ほど、時間が遅くなる。
 

パリ最新情報「時間がずれるサマータイム、省エネのメリットと心身へのデメリット」



 
この切り替えには、人為的な理由が背景にあった。
事の発端は、1973〜74年に起きたオイルショックの影響である。
これにより各国は深刻なエネルギー危機に陥ってしまい、夜間照明を抑える必要に迫られた。
よってサマータイムの導入(時間を1時間早めること)は、夏の長い日照時間を有効活用でき、省エネには打って付けの制度だったのだ。
この時間変更により、フランスでは毎年351GWh、つまり総エネルギー消費量の0.07%が節約できているという。
なおEU加盟国では、夏時間も冬時間もそれぞれ同じ日時で統一されている。
※フランスの日照時間は季節によって大きな幅がある。例えば6月21日は16.10時間の日照時間であるのに対し、12月21日は8.14時間と倍近くの差。
 

パリ最新情報「時間がずれるサマータイム、省エネのメリットと心身へのデメリット」

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ただデメリットとして、健康に与えるリスクが多方面で指摘されている。
一番のリスクは、やはりサマータイム切り替え時に起こる「急な睡眠不足」だろう。
健康体であれば、3日〜5日で身体が時差に慣れていく。
しかし持病を抱えている人・健康に不安のある人にとっての睡眠ロスは侮れず、たとえ一時間であったとしても、心筋梗塞や鬱、脳卒中などの危険性が高まってしまうという。
実際にフランスでは夏時間の切り替えから一週間以内に、交通死亡事故が6%も増えるという結果が出ている。
 

パリ最新情報「時間がずれるサマータイム、省エネのメリットと心身へのデメリット」



 
携帯電話が普及する前は、切り替わったことをうっかり忘れて待ち合わせ時間に遅刻してしまった、といったアクシデントがあったようだ。
ただ今日では夏時間・冬時間ともに、電子機器はすべて自動で切り替わってくれるため、そのような心配はほとんどなくなった。
電車や飛行機の発着時間にも大きな問題はない。
一方でフランスには手動の時計(歴史的遺産)も多く残っている。
そのため翌月曜日の朝にはフランス中の時計職人が一斉に出勤し、時間を一時間早めたり、遅めたりといった作業が各地で行われる。

こうした不便から、ここ数年は、年に2度の時間変更を廃止しようとする動きがEU域内で見られた。
実際にEU議会では過去、「時間変更制度を21年を最後に廃止する」という審議がなされていた。
しかし間もなく新型コロナウイルス、ウクライナ危機と重大な社会問題が発生。
時間変更の件はその隅に追いやられてしまったという。
ちなみにフランス国民の意見としては、大多数(83.74%)が時間変更の廃止に賛成しているということだ。
ところがどの時間帯を採用するかについては、各国の合意が得られていない状況が続いている。
報道によれば、ドイツや北欧諸国は冬時間を好み、フランスや南欧諸国は夏時間を推しているとのこと。
いずれにしろ欧州は再びエネルギー危機に陥っているので、解決にはまだまだ時間がかかりそうだ。(大)
 

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