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パリ最新情報「夏のセール、パリのファッション業界は大不振。天候と観光客頼みも」 Posted on 2022/06/30
6月22日、夏のセールがフランス全土で一斉にスタートした。
フランスは年に2回、6月と1月に大規模なセールがあり、その2回の日程は政府が定めている。
いつもは人だかりができるほど賑わうのだが、今年は少し様子が違うようだ。
夏のセールが始まって一週間。
フランスでは「夏のセール、大盛況!」という見出しで始まるニュース記事を見つけることができない。
過去2年間のパンデミック中も不振だと報道されたが、それは世界共通の出来事だったので致し方がない。
ところがフランスが自由を取り戻した2022年も、引き続きファッション業界を中心に苦戦を強いられているというのだ。
「ファッションの都パリ」なのに、パリジャンはファッションにほとんど関心を示していないという。
その理由の第一にはインフレがある。
フランスでは7月からバカンスが本格的にスタートするため、人々はファッションよりバカンス代を優先させている。
フランスは陸続きなので移動手段に車を用いる人が多い。
バカンス中の高いガソリン代や食費のことを考えると、ファッションは手持ちのもので…となるらしい。
次にテレワークの定着、そしてオンライン注文が主流になったことも理由にある。
テレワークの台頭は世界中の人々の服装事情を変えた。
フランスでもそれが顕著で、凝ったファッションより楽で動きやすい服、あるいはスポーツウェアの方が好まれるようになった。
オンライン注文も同じく、自宅にいながら欲しい時に好きな服を、という買い方が主流になった。
古着フィーバー、洋服のお直しブームも拍車をかけている。
もともとエコに関心の高いパリジェンヌ。
たまに新調はするものの、昨今のリユース熱がファッション業界に変化をもたらしている。
そのため彼らはファストファッションを中心に、エコフレンドリーでないブランドを避ける傾向にあるとのことだ。
とはいえパリを訪れる観光客の数は、コロナ前に追いつく勢いで回復している。
2019年が3800万人だったのに対し、今年2022年の見込みは3300万人と好調だ。
パリのデパートはそういった観光客が頼りでもあるという。
ロシアや中国からの旅行者は激減したが、幸いなことにEU近隣諸国やアメリカから客が来てくれている。
パリ中心部のホテルの稼働率も良く、デパートと連動して人の動きが見られるようだ。
一方地元パリジャンの集客は天候に大いに左右されている。
このところの熱波で人々は不必要な外出を控えるようになった。
そのためデパートに寄ったとしても彼らの目的は冷房で涼むことだったり、フードコートで冷たいものを飲むこと。
ただそれでも「ついでにサンダルでも買おう」となる人もいるので、パリのデパートは入口付近に大きめのセールワゴンを置いたりもしている。
ひと昔前は雨が売上を左右する、と言われていたが、今となっては熱波が少なからず関係するようだ。
しかし逆を言えば、服が欲しい人にとって今の時期のパリは買い物天国のようなもの。
ファッション業界にとっては辛い時期が続いているが、消費者目線だとやはり低価格はありがたい。
既製服からエコフレンドリーに変化するファッションの都。
どちらにしてもその冠がなくなってしまわないよう祈るばかりだ。(セ)