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パリ最新情報「2022年夏、フランス人はどこに出かけた?3つのトレンドも新たに登場」 Posted on 2022/08/19 Design Stories
夏休み終了まであと2週間を切ったフランス。
バカンスから戻る人も段々と増え、こんがり日焼けしたパリジャンが街を歩くようになった。
たくさんの人が夏の太陽を楽しんだようだが、現実にはヨーロッパ情勢は不安定なままだ。
そのため今年のバカンスは、海外組と国内組が約半々に分かれる結果になった。
海外組に人気だった行き先は、スペイン領のカナリア諸島、ギリシャのクレタ島、地中海のマヨルカ島、そしてチュニジアである。
いずれも中距離で、海を存分に楽しめる場所が選ばれた。
しかし国内組も負けてはいない。
コロナ禍より続く国内旅行人気は衰えておらず、コート・ダジュール、ヌーヴェル・アキテーヌ地域圏(大西洋側)、ブルターニュ地方には例年と同じように多くの人が集まった。
さてその国内組で、今年新しく現れた3つのトレンドがある。
不安定な社会情勢の中、フランス人が新たに見つけた楽しみとは?人気順にご紹介したい。
2022年夏、テレワークとバカンスをくっつけた「トラカンス(tracances)」という言葉がトレンド入りを果たした。
これはバカンスの前後に、数週間の日にちを追加して休暇先でテレワークを行うというもの。
もともとはカナダから始まっており、雇用主が従業員の渡航費を負担し、遠方でのテレワークを認めた制度である。(フランスでは渡航費負担までは行っていない)
今年は国内組の約35%がトラカンスを実施したとあり、年齢層は18歳〜35歳の若い世代に集中した。
この理由には、ロックダウン時のテレワークがトラウマになっていることが挙げられる。
計3回のロックダウンは、フランス人に労働時間の増加、体調の悪化(睡眠障害、軽度のうつ)という問題をもたらしてしまった。
そのため若い世代を中心に、家族のもと、もしくはリゾート先でテレワークを行うスタイルがどんどん流行しているのである。
公私混同を良しとしないフランス人だったが、今ではトラカンスの可能性を提示することで、人材確保を図る企業も出てきているという。
もう一つは、イル・ド・フランス地域圏(パリを中心とした首都圏)におけるキャンプフィーバーだ。
昨年末から続く物価上昇で、バカンス先を近場としたフランス家庭は多い。
彼らにとってのキャンプ・バカンスは「より安く、より近く、より豊かに」がモットー。
イル・ド・フランス地域圏には84のキャンプ場があり、今年特に人気だったのはディズニーランドにも近いヌイィ・シュール・マルヌ市営キャンプ場である。
本格的なバーベキューを楽しんだり、キャンプと合わせてディズニーランドに行くこともできるため、家族連れだけでなく外国人キャンパーも増えているそうだ。
また今年のフランスでは、山方面がバカンス先に選ばれなかったようだ。
これは相次ぐ山火事やモンブランでの落石事故、ガソリン代の高騰が理由にあって、例年人気だったアルプス地方では観光客が減少してしまった。
代わって大人気を博したのは、南仏・ニースのパラグライダー場。
パラグライダーはフランスでも人気のスカイスポーツなのだが、アルプス地方へ行けなかった人々が南仏に集まり、今年は常に満員であったという。
南仏は古くからバカンス先に選ばれてきた。
ただ2020年以降は国内旅行の需要増加でさらに注目が集まっており、セカンドハウスの建築ラッシュも続いている。
マクロン大統領夫妻は5年連続で南仏・ブガンソンをバカンス先に選ぶほどだ。
南仏人気は新しくはないが、昨今の社会情勢によってますます盛り上がっているのは確かだ。
9月には新学期がスタートし、フランス社会もようやく正常運転に戻る。
この9月にはパリで素敵な文化施設がいくつかオープンする予定なので、秋の最新情報でまたお届けしたい。(こ)