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パリ最新情報「フランス、ストリートハラスメントから救済する合言葉を設置へ」 Posted on 2022/06/22 Design Stories
世界中で起こるストリートハラスメント。
ストリートハラスメントは、すれ違いざまに声をかけられたり、口笛を吹かれたり、体型や見た目を揶揄するなど、相手を侮辱する「公的な場におけるあらゆるハラスメント行為」のことを指す。
ナンパや痴漢はその筆頭であり、女性にとっては大変に屈辱的なものだ。
日本でも頻繁にニュースになる問題だが、残念ながらここフランスでも非常に多い。
「生涯で一度はハラスメントを経験したことがある」と答えたフランス女性は約80%、人口にして2800万人にも及ぶという。
地域別ではパリが最も多く、全体の24%を占める。
パリは文句なしに美しい。
しかし、日没後も女性が一人で安心して歩ける街だ、とはなかなか言い難い。
性的嫌がらせに限らず、タバコをせがまれた、現金をせがまれた、断ったら断ったで酷い言葉で罵られた…という経験がある人は男女ともに多いのではないだろうか。
こうした嫌がらせに対しては、罰則が無いわけではない。
フランスでは、ストリートハラスメントの加害者には罰金を科せられる。
以前は90ユーロ(約12600円)であったが、マクロン大統領は今年2月からそれを3倍以上の300ユーロ(約42000円)に引き上げた。
ただ、声を上げる女性が少ないというのも事実だ。
2019年では被害者全体のうち、苦情を申し立てたのはわずか2%だったという数字も出ている。
報復が怖い、その場で喧嘩になる、判決が出るまでの時間が長すぎるといった理由で、多くの女性が我慢しているというのだ。
しかし女性が希望しているのは、罰そのものより「予防」と「第三者の助け」である。
第三者のヘルプは特に重要だ。
「あなたにも非がある」と一刀両断してしまえば被害者は二重に傷つけられることになる。
フランスではこの度、こうした第三者の理解とヘルプを示す「アンジェラ作戦」が発足された。
アンジェラ作戦とは、嫌がらせを受けた被害者が、写真のステッカーを貼ったお店に避難することができる救済システムである。
被害者はその場で「Où est Angela ?(アンジェラはどこ?)」と合言葉を発する必要があり、お店の人はそれによって助けを必要としているかどうかを判断する。
状況によっては被害者に代わってタクシーを呼んだり、警察に通報することもあるという。
また女性だけでなく、男性、子供、お年寄り、旅行者など全員が利用することができる。
加盟する店舗スタッフは事前に2時間の研修を受けており、全てがボランティアだ。
もともとは英国でスタートしたというアンジェラ作戦。
フランスでは4月より東部ブザンソンで始まった。6月現在ではアミアン、ルーアン、ランスといった地方大都市にどんどん広まっている。
首都パリではまだ導入されていないが、被害が一番多い街であるため、早め早めの対応が求められる。
ストリートハラスメントを受けた時、警察が近くにいないどころか一瞬の出来事で気が動転してしまうことが多い。
アンジェラ作戦はまだ数が少ないとはいえ、0よりはあった方が確実に良い。
女性自身はもちろん、年頃のお嬢様を持つ親御さんも頭に入れておきたい救済措置だ。
ハラスメント問題はどの分野でも可視化が重要となる。
自分がハラスメントの場に居合わせる「第三者」となるケースも十分に考えられるので、加害行為には徹底してNOを伝え続けていきたい。(大)