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パリ最新情報「まるでおとぎの国。ストラスブールは魅力がいっぱい!」 Posted on 2021/10/19 Design Stories
地球上には、日々の暮らしからは想像もつかないような素晴らしい景色が存在する。
パリからTGVに乗って約2時間、ドイツとの国境に程近いストラスブールは、間違いなくそのなかの一つと言えるだろう。
今までに何度も国が入れ替わったという数奇な運命を持つストラスブール、そのキャラクターは首都パリやノルマンディ地方、そして南仏とは全く違うオリジナルなものだ。
「おとぎの国」という言葉はストラスブールのためにあるのでは、というほどメルヘンな街並みで、ドイツの豪快さとフランスの繊細さがとても良い感じにミックスされている。
その旧市街は、なんとまるごと世界遺産に登録されるほどの美しさを誇り、コロンバージュと呼ばれる木組みの家屋が特に素晴らしい。
ヨーロッパの街の中心には、いつも大聖堂が存在する。
その各々に最高の建築技術が施されているのだが、なかでもストラスブール大聖堂は別格級の完成度だ。
11世紀に建てられたというストラスブール大聖堂、これはもうゴシックの大傑作である。
地元産の砂岩を用いたバラ色の外観は例えようのない美しさで、歴代の名工たちの腕が光っている。
そのあまりの芸術性に、21世紀の最新技術であるスマートフォンがますます小さく見えてしまった。
市街地に滞在していれば、このストラスブール大聖堂の鐘がアラーム代わりとなって目が覚める。
アルザシアン(ここアルザス地方に暮らす人々の総称)は優しく誇り高く、大都会で感じるようなドライさがない。
美術館では受付の女性が編み物をして待っている光景も見られ、その穏やかな暮らしぶりに心がふっくらした。
パリや東京とは違った時間の流れ、歴史あるストラスブールの風情はまさに「現代に生きる中世」といった印象で、今年が2021年でコロナ禍にあった、というのをすっかり忘れさせてくれた。
さて、忘れてはならないのが、ストラスブールは「美食の街」だということ。
ザ・フランス!というような見た目麗しい料理ではないものの、ドイツとフランスの2文化が溶け込んだ郷土料理は感動的に美味しい。
また、アルザス地方は白ワインの名産地でもある。
いったい今までどれくらいの美食家を唸らせてきたのだろう、というほど郷土料理と白ワインのマリアージュが素晴らしく、いつまでも心に残る。
そんなアルザス地方の名物料理をここでいくつかご紹介したい。
まずは、いちばん代表的な料理と言える「シュークルート」。
千切りキャベツをスパイスやハーブと一緒に塩漬けし乳酸発酵させ、肉や野菜と一緒に蒸し煮にしたものである。
やはり、郷土料理は強い。
パリでもどこでも、シュークルートは真空パックとなって売られているのだが、レベルが全然違う。
シンプルな見た目ながら、ソーセージの旨味が最大限に生かされていて、魚介類以外でこれほど白ワインが合うと思ったのは初めてだった。
正直、これだけを目当てにストラスブールに行っても良いというほど素晴らしかった。
レストランによって少しずつ味が異なるので、地元の人におすすめを聞くのも良いかもしれない。
次に、アルザシアンのソウルフード、「タルト・フランベ」。
薄く引きのばされた生地に、「フロマージュブラン」と呼ばれる名物のチーズ、タマネギ、ベーコンをのせて焼いたシンプルな料理である。
ピザよりもライトで、味は素朴、女性でも一枚はいけてしまうほど食べやすく、値段も一枚5~6ユーロと安い。
もちろん白ワインとの相性も良いのだが、地元っ子はビール片手にタルト・フランベ、というのがお決まりのようだ。
ちなみに、ビールの美味しさも並外れたものがある。
そして、アルザス名物の「マンステール(Munster)」というチーズに度肝を抜かされる。
もともとはこの辺りに修道院を建てた修道士たちが、放牧を行いチーズを作るようになったのが始まりだという。
ウォッシュタイプのマンステールは作る工程で何度も塩水につけて熟成させるため、その香りはかなり激しい。危険物かと思わせる個性的な匂いだが、味はマイルドでなめらか、やはりアルザスの白ワインに合う。
チーズ好き、ワイン好きにとっては病みつき必至の珠玉チーズである。
また、ストラスブールは「お菓子の街」としても良く知られている。
毎年11月から12月にかけて開催されるクリスマスマーケットが世界的に有名なように、ここはフランス屈指のお菓子の聖地。
フランスパティシエ界の重鎮、ピエール・エルメ氏をはじめ、アルザス出身のパティシエは多く、日本からも多くの職人が修行に訪れているほどだ。
宝石のようなパティスリーがひしめくなか、伝統的なスイーツとして名を馳せるのが写真の「クグロフ」。
甘いクグロフは、サクランボの蒸留酒に浸けて柔らかく戻した干しブドウを生地のなかに入れて、アーモンドで飾り付けしてあるのが特徴だ。
伝統的にアルザスの人々は、日曜日の朝食時やお祝いの日に食べていたという。
そのほかにも、アルザス特産のブドウ種「ゲヴェルツトラミネール(Gewurtztraminer)」を原料にしたリキュールのデザートも存在する。
アイリッシュコーヒーのリキュール版、といった名物デザートで、寒いアルザス地方ではこのようにパンチの利いたスイーツが身に染みる。(アルコール度数は40%!)
全体的にカロリー高めではあるものの、どれもアルザスらしさ満点のグルメで、心も体も満足する。全くストラスブールという街は、「EUの首都」と呼ばれるに等しく、人の視覚も味覚も掴んでしまう不思議な力があるようだ。
アルザス地方にはストラスブールのほかにも、「美女と野獣」の舞台となった街コルマールやミュルーズなど、絵本のような世界が点在している。
歩いていたら街の人が歌いだすのではないかと思うほどフェアリーテールな光景は、日常の憂いを一掃してくれるほど魅力的なものだった。
海を渡って旅をしたいという気持ちが、世界中でこれほど高まっている時代もなかなかない。オンラインの熱量を肌で感じるその日まで、きっとあともう少し。このストラスブール滞在記が次回の旅の一助となれば嬉しい。(セ)