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パリ最新情報「教師殺害で連帯を強めるフランス」 Posted on 2020/10/20 Design Stories  

テロ事件の全容が次第に明らかになってきた。「先生が教室を出ろと言った」と主張していた女生徒は実際には授業には出ていなかった。犯人は犯行直前、教師を特定するため、校門から出てきた生徒を買収していたことなどもわかってきた。夜間外出禁止令が出ているフランスだが、コロナのニュースは影を潜め、現在は、この事件解明へ向けたテロ関連ニュース一色になっている。

18日(日)、帰宅途中、テロリストによって殺害された中学校の歴史教師、故サミュエル・パティ氏のオマージュとして、フランス全土でデモが行われた。
パリのレピュブリック広場には1万人以上が集まり、ナントやリヨン、トゥールーズなどフランス各地では5千人以上が参加した。

パリ最新情報「教師殺害で連帯を強めるフランス」



パリ最新情報「教師殺害で連帯を強めるフランス」

パリのレピュブリック広場の中心にあるマリアンヌ像はフランス共和国を象徴する女性像として知られている。
2015年の連続テロ事件以来、この広場にはテロに屈しないフランス人が集ってきた。
今回、フランスという国の根本を支える「フランスの教育」が標的にされたこともあり、集まった人々はこれまでのテロ事件以上に大きな動揺に見舞われ、また、一層強い連帯を示している。
大人はもちろん、中学、高校生に至るまで、参加した年代は実に幅広く、この事件の波紋の大きさを物語っている。
「私はサミュエル」、「私は教師」と掲げる人に加え、「彼らは共和国の首を落とすことはできない」と掲げる人、それぞれが怒りをぶつけ、特に教師たちは「私たちは表現の自由を教え続ける」と語気を強めた。

パリ最新情報「教師殺害で連帯を強めるフランス」

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※「テロリストはフランス共和国の首を落とすことはできない」というメッセージ。

今回の事件の引き金となったのは公民教育の授業だった。
教師が授業中に見せた預言者ムハマンドの風刺画、そして、その際、イスラム教の生徒や見たくない生徒は一時的に退室するか目を背けるよう促したことが今回のテロ事件に発展した。
警察の調べではその授業の事実はあったものの、教育の一環であったことに変わりはなく、それは一般的に行われるフランスの教育現場の一場面を逸脱するものではなかった。
例えば、解剖の授業などでも、教師によっては見たくない生徒は教室から一時退室して良いと提案する。
サミュエル教師のとった行動も、差別ではなく、配慮であったことがわかる。
SNS上で事実を歪めて広げられたことが、この残忍な事件を招く引き金になったのも事実であろう。
サミュエル氏のもとに殺害脅迫などが届いていたが、教師は事態を収めるよう、名誉毀損などの被害届の提出は控えていた。
しかし、教師の願いは届かず、事態は収まらぬまま、16日、帰宅途中に殺害されることになった。



自由、平等、友愛をスローガンに掲げる共和国フランス、教育の現場では特定の信仰に傾倒しない、信仰の平等の立場をとっている。
国家は宗教的な力を行使せず、教会は政治的な力を行使しない。
ここフランスで、表現の自由、そして、教育という2つが狙われた今回のテロ事件は、フランスという国の理念、精神的核心が攻撃されたに等しい事態であった。
マクロン大統領は事件後すぐに現場を訪れ、「暴力が勝つことはない」と発言し、ジャン・カステックス首相はTwitterにて「私たちは恐れない。怖くない。私たちを分断させることはないのだ。私たちこそがフランスだ!」と発言した。
明後日の21日(水)、故サミュエル・パティ氏の国家追悼式が行われる。

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