欧州最新情報
パリ最新情報「職場の人間とはSNSで繋がるべきか?公私の線引きが変わりつつあるフランス」 Posted on 2023/04/15 Design Stories
情報収集の一ツールとして活躍するSNS。
そんなSNS上で同僚・上司から友達申請を受けるのは、フランスでも珍しいことではなくなった。
フランスにおけるこの傾向はパンデミック以降、テレワークの増加により特に増えたという。
自宅でひとり作業をしていると、同僚の近況が分からず孤独に陥りやすい。
当初、その分プライベート時間が充実するとは思っていたが、家族以上に長い時間を共有する同僚や上司との「ランチタイムの会話」は、良好なコミュニケーションを構築するのに実は役立っていた。
ところが今の社会では色々な絆が希薄になっている…。
そんな思いが、同僚からの友達申請を受け入れたり、逆に申請したりという行動に繋がっているというのである。
フランス人はよく、公私混同をせず仕事は仕事と割り切る人たちだと言われる。
それは間違いないのだが、SNSに限っては意外な調査結果も出ている。
仏調査会社OpinionWay(2022年)によると、63%のフランス人がインスタグラム及びフェイスブックで職場の人間と繋がっており、うち93%の人が同僚や上司に「いいね!」を押した経験があるという。
しかし2020年以降に新社会人になったフランス人にこの傾向は見られない。
最も多いのはコロナ前の働き方を知っている30代〜40代のSNS人口で、それ以降の世代では逆に興味が薄れるそうだ。
ただ問題は、SNSが仕事とプライベートの境界を曖昧にすることだ。
これにより同僚との距離が近づく反面、うっかりした投稿が自分の仕事や職場環境に影響を与えかねないというプレッシャーも生じる。
またフランスでは「同僚の投稿を知ったことで、見る目が変わった」という意見も相次いでいる。
一部では悪質なケースも見られる。
例えば職場の同僚がストーカー化したり、プライベートな行動を管理職に告げ口されポストが危うくなる、といったレアケースだ。
※フランスにおけるストーカーという言葉はSNSの発達により一般化した。
しかしこれらの嫌がらせは、フランスでは「モラルハラスメント」「サイコハラスメント」として経営陣や人事部に報告する必要がある。
逆にSNS上で上司や雇用主を中傷した場合、名誉棄損として解雇に繋がる可能性もある。
ということで最近のフランスでは、プライベートと仕事を分けましょう、と発信する情報サイトがだいぶ増えてきた。
内容は、Facebook、Twitter、Instagramのアカウントは鍵付きか、アカウントを2つ持つこと。
そして同僚にはLinkedInなどのプロフェッショナルなツールを優先させましょう、というものだ。
もともと公私混同しないフランス人への情報としては逆に新しいと感じてしまうのだが、昨今のフランスは実はSNS大国でもある。
子どもたちへのSNS規制も国家単位で続々と設定されているほどだ。
趣味の投稿が副業に繋がった、元同僚が良き友人になった、とメリットがある一方で、デメリットが生まれてしまうのもSNSである。
こうした公私の線引き問題に悩むのは、フランスではフリーランス・若い起業家など、会社員から独立を果たした人たちに特に多いということだ。(内)