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パリ最新情報「パリジャンの足元、スニーカー。履き古したシューズにも第二の人生を」 Posted on 2023/01/29 Design Stories
パリジャン・パリジェンヌの足元を見ていると、スニーカーの使用率がとても高いことに気づく。
冬にはブーツを履く女性も見かけるのだが、そのほとんどは低くて太めのヒールになっている。
というのは、パリの人々は一駅二駅を徒歩で移動することが多く、減っているとはいえ石畳の道もまだまだ健在であるため。
数年前から続くトレンドも相まって、歩きやすいスニーカーは今や彼らの「マストアイテム」と言って差し支えないだろう。
ではどれくらいのトレンドなのか。
実はスニーカーは、2022年にフランスで売れた靴のうち半分以上を占めたという。
5年前は32%だったというから、ロックダウン中からスニーカーの需要が急激に増えたと予想できる。
夏は少し暑いとしても、スニーカーはブランドや色、着用するモデルによっては他の人とスタイルを分けることもできる。
そのためこの靴は季節を問わず、高校生から働き盛りの世代までフランス人に幅広く愛用されているのだ。
ただ唯一の問題点は、ファッションの一部であるのに、洋服と違ってリサイクルが非常に難しいところであった。
革靴は修理で綺麗になるのに、布の面積が多いスニーカーは履き潰して捨てるしかない。
さらに技術的にもスニーカーは複雑な作りであるため、リサイクルの難易度がとても高いということだ。
しかし今、パリを中心に「スニーカーに第二の人生を歩ませよう」とする取り組みが広がり始めた。
スニーカーのリサイクル回収はこれまでも、いくつかの国外スポーツブランドが実践していた。
例えば仏アディダスは2022年初めの一か月間に限定して、使用済みスニーカーを店舗にて回収できるよう呼びかけていた。
また大手ナイキはフランスにおいて、リサイクルではないが、製造工程で使われなかったプラスチックの廃材を再生利用することを試みている。
こうした動きに続いて、2023年からはフランスの企業もスニーカーのリサイクル回収を始めるようになった。
フランスのスニーカー専門店「COURIR」では、アヌシー、グルノーブル、パリ(1区、リヴォリ通り)にある国内3つのショップにて、中古品スニーカーの提供を1月より呼びかけている。
なお靴の持ち込みはショップで買ったものでなくても可能。
3店舗での反応を見た後は、フランスにある283の全ショップでも展開していく予定があるという。
そして集まった古いスニーカーは、リヨン近郊にあるプラスチック素材の専門加工業者に送られる。
別のスニーカーに生まれ変わることはないが、例で言えばスキー場のリフト降り場の足元にある、プラスチック製のマットなどに再利用されるということだ。
なおここまで本格的なリサイクル回収は、フランスでも初めての試みとなる。
数十年前にデザインされた古いタイプのスニーカーは、ゴムとキャンバス地で作られたシンプルなものだった。
しかし最新のモデルでは、1足の中に30〜35種類の素材が組み合わされていることもあるという。
それがフランスでのリサイクルが困難を極めた理由だ。
ただフランスのリサイクル事業はここ数年で革新的な進歩を遂げている。
将来的には仏スポーツ系ブランドが、スニーカーのリサイクルを専門とした部署を設置する可能性もあると報道された。
フランスで需要の大きいスニーカーと、ますます拡大するリサイクル事業。
この分野では今後新たな雇用も生まれるとして、フランス国内で大きな期待が寄せられている。(ル)