先日、パリではちょっと変わったクリスマスマーケットが開かれた。題して、SHIZEN 2024, Village de noël japonais! 直訳すると、日本クリスマス村。売り出されるものは全て日本製品や和食、工芸品などで、日本に特化したマーケットということになる。他の日に別の国の市場があるわけでもなく、あくまで日本、という非常にユニークな企画なのだった。この「自然へ！」というコンセプトの名前はやや意味不明だが、日本に対して何となくナチュラルな、自然的なイメージを抱いている人が多いということかもしれない。
 

 
全部で80ほどの出展があり、規模自体はそんなに大きくはないのだが、来場者はそれを上回る数だったらしい。なんと、入るためだけに1時間並ぶことになった。チケットはなく、入場も無料なので、その分、中が混雑しすぎないように入り口のところで人数調整がされていた。ここまで人が多かったのはきっと、12月7日と8日の２日間限定開催だからというのもあるかもしれない。場所はパンタン(Pantin)というパリ中心部から外れた、イル・ド・フランス圏ぎりぎりの地区。なので、ふらっと立ち寄るというよりも、みんなこの日をめがけてやって来た筋金入りの日本好きだと思われる。並んでいる人を見ても、コスプレをしていたり、寒いのに甚平のような格好をしている人もいたり…
 

 
本や雑貨、和柄アクセサリー、食器からイラストまで色々。お店の人は日本人とフランス人半々、という感じだった。
 

 
中に進んでいくと、こんな風景に。大漁旗とアイスクリームが一緒くたになっているのには笑ってしまった。しかも、肝心なアイスはどこにも見当たらず、その下にはこけしが並んでいるという、日本人にはツッコミどころ満載なレイアウトになっていた。
 

 
ステージもあって、何やらこれから始まりそうな雰囲気。三味線かな？箏曲や日舞など、伝統芸能を披露する時間も設けられていたのかもしれない。また、出展物以外にも、書道や折り紙、生花、おにぎり作りなどのワークショップが開催されていた。単なるマルシェではなく、日本文化を丸ごと体験してもらえる機会になっていた。
 

 
こちらは、フランスでうまみを届けるUMAMI SOUPさん。出汁やふりかけ、インスタントの海藻スープを提供している。友達へのお土産にいいかなと考えていたら、設立者のErikoさんが気さくに話しかけてくださった。こだわりのポイントは、わかめや昆布などを使った100%天然素材。普段はオンラインから購入ができる。Erikoさんは日本で色々と職務経験を経たのち、7年前に渡仏、思い切って事業を起こしたとのことだった。かっこいい〜。留学生です、と話したら「何か始めるなら早い方がいいよ」とのアドバイス。フランスで活躍している日本人の方と知り合い、お話を聞けるのもこういう場所ならではで、とても良い刺激になる。
 

 
他にも、日本酒やお好み焼き、唐揚げ、おにぎりなど、フードスタンドも充実していた。寒い外で飲むお味噌汁は沁みる。
 

 
日本クリスマス村に訪れ、フランス人たちに紛れて日本文化を観察する、というちょっと不思議な経験をすることができた。彼らの目には日本が、伝統工芸や食文化、サブカルチャーなど様々な面においてミステリアス、もしくはクール、そして魅力的に映っているようだった。お店の人と話し、色々なものを見て懐かしさで日本が恋しくなると同時に、日本人であることが誇らしくもなった1日であった。（ア)