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パリ最新情報「フランス、『1ユーロ学食』案を採択!すべての学生にバランスの取れた食事を」 Posted on 2025/01/31 Design Stories  

 
1月23日、すべての大学生に「1ユーロの学食」を提供することを目的とした法案が、フランス国民議会で採択された。
これまで1ユーロの学食は、奨学金を受給している学生や、経済的に非常に不安定な状況にある学生など、一部の学生に限定されていた。今後、この法案は上院でも同じ条件で可決される必要があるが、もし可決されれば、フランス国内に在籍する約300万人の大学生全員が同サービスを利用できるようになるという。
 



 
今回採択された1ユーロ学食の目的は、すべての学生にバランスの取れた食事を保証し、「社会的緊急事態」への対応を可能にすることにある。というのも現在のフランスでは、3分の1以上の大学生が「物価が高い」「お金がない」という理由で定期的に食事を抜いていることが明らかになったためだ。学業と並行してアルバイトをしている大学生では、約半数が同様の状況にあることも分かっている(フランス世論研究所調べ)。
 

パリ最新情報「フランス、『1ユーロ学食』案を採択!すべての学生にバランスの取れた食事を」



 
フランス教育省によると、2023-2024年度には約50万人の奨学生および経済的に困難な大学生が、1ユーロ学食の恩恵を受けている。学生たちからは非常に好評だったようで、「全学生に拡大されるかもしれない」というニュースが報道された際には、歓声とともに拍手が湧き起こったという。もちろん、このシステムはフランスの大学に通う外国人留学生にも分け隔てなく適用される。

ちなみに、フランスの学食は「クルス(Crous)」と呼ばれる食堂で、好きなものを自分で選び、最後に会計をするビュッフェスタイルが採用されている。内容は、メイン(魚・肉・パスタ類)に加え、副菜としてサラダやチーズ、デザートなどが選べるというもの。もともと3〜4ユーロで提供されている学食だが、毎日のこととなれば、1ユーロ学食は彼らにとって大きな助けとなるだろう。
 

パリ最新情報「フランス、『1ユーロ学食』案を採択!すべての学生にバランスの取れた食事を」

※「クルス(Crous)」の風景(Le Parisien X)
https://x.com/le_parisien/status/1882710925364367506?s=12



 
このように学生をはじめ、社会的弱者に手を差し伸べる姿勢は、フランスの特徴の一つと言えるかもしれない。実際、フランスではボランティア活動がとても盛んだという印象を受ける。クリスマスに一人で過ごす人が近くにいれば、関係性にかかわらず自宅に招き、一緒に過ごすよう提案することもある。

とくに現在のパリでは、インフレに加え、高騰する賃料や学生の住宅難が深刻な問題となっている。シングル向けアパートの不足により、学生たちが入居先を見つけられずにいる状況が続いているのだ。だからこそ、彼らには少しでも食費の負担を減らし、安心して勉学に励んでほしいと願う。
一方で、大学の食堂「クルス(Crous)」では常に長蛇の列ができ、食事をあきらめてしまう学生も少なくないとされている。このような課題の改善も含め、1ユーロ学食の制度が上院でも可決されることを期待したい。(コ)
 

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