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パリ最新情報「フランスのサンタ事務局、創設60周年。子供たちの手紙に返信が届く!」 Posted on 2022/11/16 Design Stories  

 
11月15日、毎年恒例のサンタ事務局がフランスのリボーヌ(南西部)で発足された。
サンタ事務局とは、子供たちが12月20日までにサンタ・クロース宛に手紙を書くと、直接返信がもらえるというフランス郵政の粋な計らいである。
この試みはフィンランド、ドイツ、カナダなど世界各地で行われているが、フランスでは1962年から始まっており、今年で創設60年を迎える。
 

パリ最新情報「フランスのサンタ事務局、創設60周年。子供たちの手紙に返信が届く!」



 
サンタ事務局の舞台裏としては、リボーヌの郵便局(La Poste)に集まったボランティアのスタッフ60人が、期間中一丸となって対応しているという。
1960年代はおよそ5千通だったというが、今ではすっかりクリスマスの風物詩となり、昨年にはフランス全土から120万通もの手紙が届くようになった。

実はこの始まりには、心温まるストーリーが隠されている。
1950年、フランス中部に住む一人の郵便局員は、子供たちが書いた「サンタさんへの手紙」が廃棄されることを不満に思っていた。
そのため彼はごく個人的に手紙を開封するようになり、以来12年間、地元の村の子供たちから届く数百通の手紙に一人でコツコツ返事を書いていた。

そしてこの噂は当時の郵政大臣、ジャック・マレット氏の耳に入ることになる。大臣は郵便局員の行いにいたく感銘を受けたといい、これを公的なサービスにしようと「サンタ事務局」をリボーヌに設置することを決めた。
 

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以来、リボーヌのサンタ事務局ではスタッフが子供たちからの手紙を開封し、差出人の住所宛に無料でクリスマス・カードを送っている。
なお1962年当初の返信(定型文)には、当時の郵政大臣の妹で小児科医のフランソワーズ・ドルト氏が考えたイラスト付きの文章が添えられていた。

「親愛なるわが子よ、あなたの親切な手紙をとても嬉しく思いました。私の似顔絵をお送りします。
郵便配達の人がどこかで偶然私を見たのかもしれませんね。
たくさんのプレゼントのご注文をいただきましたので、頼まれたものを持っていけるかどうか分かりません。
努力はしますが、私はとても年をとっているので、時々失敗することがあります。許してください」
と、手紙にはフランスらしいユーモアも添えられていたという。
 

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すっかり有名となったこのサービスは、今では子供たちが「生まれて初めて書く手紙」としても定着している。
ただ締切間際の12月中頃に手紙を送ると、サンタさんが多忙のあまりクリスマス前までに返事が届かないこともあるそうなので、11月の早い段階で送ることをフランス郵政は推奨している。
なお、手紙には切手も返信用の封筒も必要なく、表面に「Père Noël(サンタクロース)」と書けばきちんとサンタ事務局まで届くそうだ。(返信が欲しい場合は裏面に住所を記入。)
 

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サンタ事務局はフランス語・英語のバイリンガルだといい、希望すれば英語でも返信を受け取れる。
さらに今では時代の波に乗り、電子メールでの受付のほか、携帯アプリでの動画配信も行っているという。

今、フランスでは郵便物の減少に伴い、ポストの数がどんどん減っている。
しかし手紙には手紙の力というものがあり、大人であれ子供であれ、電子メールでは書けない思いをその中に込めることができる。
そうした事情も踏まえると、このデジタルの時代に120万通の手紙が届けられた意味は大きいと感じる。(オ)
 

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