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パリ最新情報「デモが過激化、燃え上がるバーニング・パリ。でも大丈夫」 Posted on 2020/06/17 Design Stories
知り合いとパリ中心部のカフェで待ち合わせをしていたら、爆発音が響き渡った。最初は革命記念日が近いし、軍施設の近くだったので、予行練習でもあるのかな、と思っていた。知人からラインが入り、その一帯が封鎖されているのでそっち岸に渡れないから、今日はキャンセルでお願いします、と連絡が入った。遠くからデモ隊のシュプレヒコールが聞こえだしたので、そこではじめてデモだと気が付いた。パリはロックダウン開け直後からBlacklivesMatter黒人抗議デモなどが頻発している。ギャルソンがやって来て、もうすぐ医療従事者のデモ隊がこの辺を通りますよ、と言った。
「医療従事者の不満は半端ないんですよね。ぼくの姉も看護師だけど、扱いが悪いと政府にかなり不満を持ってるんだ」
その公園の中ほどに車を停めていたので、移動させないと壊される、と思った。その時、目の前の森の中で再び爆音が轟いた。
驚いて立ち上がると、目の前を重装備した機動隊が数十人、腰をかがめながら森へと突進していく。そっちに愛車が止めてある。白い煙が立ち込めはじめていた。いつもより過激な感じがした。白衣を着た医療従事者たちが数名、カフェの中へと逃げ込んできた。
「過激だね」
と私はその連中に向かって、ちょっと抗議する気持ち半分で声をかけたら、
「違うんですよ。ぼくらのデモにブラック・ブロックが紛れ込んでるんだ」
と声を張り上げた。
ブラック・ブロックというのは黒覆面黒装束の超過激集団のことである。フランスの多くのデモに便乗をして、モノを壊したり、盗んだりをする若者たちで、彼らはもちろん体制に不満を持っているけど政治的な不満ではなく、鬱憤を晴らしたいだけ。
※注意。医療従事者の方々がこういうことはしません。暴れているのはブラック・ブロック、便乗過激集団です。
この連中が毎回やって来て、紛れ込み、悪さをする。実は、日本のメディアとかでよく報道されている過激な映像はデモ隊ではく、ほとんどがこの連中の仕業なのである。カッサー(壊し屋)とも言われている。今回はここに黄色いベスト運動の過激分子まで紛れ込んでいるようだ。
爆発音の後、目の前の公園は一瞬にして白煙で包まれてしまった。私は自分の車が心配なので、店を飛び出した。武装警官とブラック・ブロックが目の前で乱闘のような状態になった。ここで有色人種の市民が怪我したり、間違えて死んだら、黒人抗議デモがフランス中で吹き荒れてしまうことになる。よく見ていると、警察は防御しながらも、かなり冷静に行動をしている。壊し屋たちは逆に調子に乗っている。こういう行動から命が奪われる事態に発展することもあるだろう、困ったものだ。
というのか、自分の車が心配なのである。次々に押し寄せてくる過激なブラック・ブロック軍団、それに応戦をする武装警官、周辺は白煙等の煙が漂い、もはや何も見えない。医療従事者たちは、過激さに呆れて、帰り始めている。彼らのデモなのに、後半は壊し屋対警察になっていた。
自分の車目掛けて移動していると警官に、「こっちに来るな」と怒鳴られた。「車がそっちにあるんですよ」と叫んだけど、ダメだと手を振り返された。仕方がないので、ひとブロック迂回し、公園の反対側から中に入ろうとした。そこにも検問があり、警察車両が封鎖している。
「すいません、車が心配なんですけど」
「ダメです。あっちは壊し屋たちが暴れていて危険ですよ」
「でも、まだローンを払い終わってないし。すぐそこなんです。お願いします。行かせてください」
粘ったら、許可が出た。私は警官たちの後ろにくっついて駐車場へと向かった。先ほどのカフェ周辺は煙が街路樹よりも高く上がっている。爆発音も凄い。逃げ出した医療従事者たちは白衣を着ているのですぐにわかる。もはや戦場であった。
※注意。こちらが医療従事者の皆さんになります。彼ら彼女らはデモが過激分子にのっとられ、帰っていきました。パリのデモで過激な映像が流れたら、あ、この連中はブラック。ブロックだなと思ってください。便乗犯です。
なんとか車までたどり着き、中に入ったはいいが、正面はデモ隊で封鎖されているので突破できない。逆走をして対岸に出るしか手はなかった。逆走は一発免停である。悩んでいると、警官がやって来て、フロントガラスを叩いた。Uターンして退避するように、と怒鳴られた。私はエンジンをかけ、ハンドルを切って、公園の外へと脱出することになる。もちろん、角を一つ曲がると、そこは静かな夏のパリ。もう、人々は穏やかな生活を送っている。これがじつはパリの現実なのである。どうか、そういうニュースやその部分だけを切り取った動画に翻弄されないように願いたい。車がひっくり返されても、一時間後には元通りの道に戻っていたりするのがここパリの人間らしいところなのだから…。