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パリ最新情報「ロックダウン生活に役立つ、いいことダメなこと Q&A」 Posted on 2020/03/26 Design Stories
小池東京都知事が発言した「首都封鎖」という言葉のインパクトが、多くの日本国民に不安の影を落とした。海外で暮らしているDS編集部のスタッフにとっても、日々はこの慣れない首都封鎖措置とのまさに押し問答となっている。どこまでがやってよくて、どこからが法律違反なのか、分からないのである。いつ、東京や大阪が封鎖されるかわかない今、その不安を予め払拭できるささやかな材料になればとDSパリ編集部が生活者レベルの小さな悩みをかき集め、Q&A方式で、今現在分かっていることを列記してみる。来るか来ないかで気を揉むより、不意にやって来るかもしれない日本のロックダウンに備えて、読んでおくのも気休めにはなるかもしれない。備えあれば患いなし、という諺が日本にはある。
さて、まず、ここフランスでは、外出を制限されていても、外出可能な理由が存在する。生きていくうえで必要なことはいくら外出制限下にあっても、最低限は認められるということだ。これはフランスに限らず、今や一番の犠牲者を出しているイタリアやその次に過酷な状況にあるスペインとて同じ。食べるものと健康は自ら掴むしかないのだから…。国によって、外出許可の範囲は千差万別だが、フランスに住む私たちは1日に1度の、生存保証とでもいうべき外出が許されているので、それを口実に、太陽を浴びに最低限の外出を行っている。
内務省が発行する証明書に記載されている理由は以下の7つで、3月23日にアップデートされた新しい外出証明書には、日付の他に、新しく「生まれた場所」と「外出開始時間」の記入欄が登場した。基本の違反金は135ユーロ(日本円で約1万6千円)。15日以内に再度違反した場合は1500ユーロ(約18万円)、1ヶ月以内に違反を4回繰り返した者は、違反金が3700ユーロ(約45万円)に跳ね上がり、悪質な場合は最大6ヶ月の投獄が科される。
フランス全土で違反者は10万人を超えており、3月24日には、5日間で5回の違反を繰り返しした男性が、はじめて警察に逮捕された。
早速、ここに、フランス政府によって許可された最新の外出理由(3月25日現在)をまとめてみる。
ー、テレワークができない職業のための自宅ー職場間の移動。
ー、営業が許可されている職業のための必需品の買い出し、または、営業が許可されている商店での食料、生活必需品の買い出し。
ー、遠隔では不可能な診察、急を要する診察、または、持病のための通院。
ー、止むを得ない家族の理由、老人や障害者の介助、子供の世話(離婚した両親が子供を交互で育てる家族のため)。
ー、1日1時間、半径1kmを限度とした、個人の健康のための軽い運動(集団スポーツの練習や他人との接触は除く)、同一家庭内の人が数人集まっての散歩、またはペットの散歩。
ー、司法、もしくは行政からの召喚。
ー、行政の要請に基づく任務への参加。
さて、その中で、一般の人々に許可されているのは「買い出し」と「運動」ということになる。しかし、実際に生活をしていると、じゃあ、この場合はどうなるんだろう? どこまで大丈夫なの? という細かい疑問が次々に出てくるのだ。フランス政府は頑張っているが、誰も首都封鎖の経験を持たない政治家さんたち、混乱や苦労や内部での意見相違などもあるようだ。
外出制限の条件が厳しくなり、逮捕者が出たように、警察も容赦しなくなってきた。はじめて経験する外出制限という困難な状況下で、何がよくて何がダメなのかを、Q&A形式でまとめてみよう。(このQ&Aはあらゆる世代の人々がテレビやメディアや雑誌、もしくは実際に政府の広報サイトなどで行った質問に対して、DS編集部で回答を探し、生活者の目線で分かりやすくまとめてみたものである。いたらぬところもあるでしょうがご容赦願いたい)
「フランスのロックダウンで市民が感じた疑問とその答え」
Q. 近くにある小さな商店にはお肉や魚などの生鮮食品が充実していない。買い物をする場所までの距離に制限はある?
A. 基本的に、買い物の範囲は決まっていない。パリは近所にスーパーがたくさんあるけれど、フランスの田舎ではスーパーまでの距離が遠い。しかし、政府はできる限り大きなスーパーは避け、近くのスーパー、商店での買い物を勧めている。どうしても必要なものがあって買いに行きたい場合はその理由を証明書に書いておき、コントロールされた時に説明をすればよい。
Q. 運動のため、自転車に乗っても良いのか?
A. 自転車での運動はだめ。パリ近郊ですでに違反で罰金を科された人(自宅から200mのところで)がいる。
Q. 運動範囲は自宅から半径1km以内と書かれているが、実際にパリでコントロールされた人は500m以内だと警察から指摘された。どちらなのか?
A. 古い証明書には運動距離についての記載がなく、実際に警察のコントロールで「500m以内」とお叱りを受けた人が数人いた。今現在は、エドワー・フィリップ首相が「運動距離は半径1km」と発表(3月22日)したことから、1kmが正式な移動距離となった。
Q. ロックダウン中、結婚式や宗教のための集まりなどは禁止されているが、親戚が亡くなったのだけど、葬式はどうなるのか・・・。
A. 人が集まる全てのイベントは禁止だが、お葬式のみ、近親者20人以内での実行が認められている。参列者はお互いの距離を守り、最後の別れをすることができる。
Q. ペットの散歩は許可されるようだが、どの動物がペットとみなされるのか。
A. 羊やウサギ、ニワトリを散歩させた人が罰金をとられている。このことから、ペットの散歩として認められるのは、犬だけのようだ。
Q. 自宅に洗濯機がないが、コインランドリーに行っても良いのか。
A. コインランドリー前で許可書を持っていながらも違反とみなされた若者が、警察と政府に抗議したことで、この一点が明確になった。洗濯は生活に欠かせないことので、正式な理由となる。
Q. 自宅の洗濯機、暖房が壊れた。修理には来てもらえないのか。
A. 大手の電化製品販売店では、店舗は閉めていても、オンラインでの販売やアフターサービスには対応している。水道、電気、ガスなど生活に必要なサービスも機能している。
Q. 子供と外出(運動や病院など)をする場合、外出証明書は子供の分も必要か。
A. 引率する大人の分だけで良い。その証明書に一緒に外出している全員の子供の名前を書き加えておくこと。大人は外出証明書一人一枚が義務付けられている。
Q. 外出証明書は「内務省のHPから印刷し記入したもの」、もしくは「手書き」だが、手書きの場合、この証明書を丸写ししなくてはならないのか。
A. 自宅で外出証明書を印刷できない場合、手書きの外出証明書が許可されている(スマートフォンでの提示は無効)。手書きの外出証明書を用意する場合、そこには、名前、住所、外出証明書の序文、日付と時間、そして、自分が外出する理由の部分を書き写し、本人のサインが必要となる。
テレビで移民の女性が、「家にプリンターなどないし、私は字が書けない。どうしたらいいの」と声を上げていた。今回、彼女は外出証明書を持っていなかったので135ユーロの違反金を科された。フランスのように移民の多い国ではこういうことも十分にあり得るのだが、今回はとても厳しい対応がされている。よって、このような方の場合は、近所の人に印刷か代筆を頼むしかない。
と、このように、実際にロックダウン生活を始めると小さな疑問は次々と生まれてくる。なにせ、たぶん、現在生きている人類にとって、全員がはじめてのロックダウン経験だからである。ロックダウンとは何か、というものも、やっとその輪郭を掴むことが出来てきた。一方で、知り合いの知り合いが新型コロナに感染したり、亡くなったりもしてきて、その忍び寄る不安と戦いながら、この新しいシステムとも向き合わないとならないのである。
様々な疑問は、ニュースサイトなどの質問コーナーでその都度確認するしかないようだが、東京のようなメガ都市でロックダウンが起こると、このようなことも含め、もっと大きな混乱が生じることが予想される。DS編集部ではこれからも、地道に調査をし、お役にたてるよう、この紙面で報告していきたい。フランスの人たちも、私たち在留邦人も、初めてのロックダウンを手探りで生きている。いつ何時、起こるかわからないロックダウンに立ち向かうために、心の備えをまず持つことからはじめるのがいいかもしれない。世界の人口(78億人)の三分の一の人間たちが今現在、ロックダウンを経験中なのだから…。