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パリ最新情報「パリ首都圏、公共交通機関の運賃を値上げへ。1月より月額で11.8%増」 Posted on 2022/12/09 Design Stories  

 
フランスの物価上昇が止まらない。
今、仏国民はエネルギー価格や食料品の値上げに辟易としている。
生活になくてはならない物が次々に値上げとなった上、来年1月には計画停電の話までもが浮上している。
そして今度はそれに追い打ちをかけるように、交通運賃が一斉に値上げになってしまうというのだ。
 



パリ最新情報「パリ首都圏、公共交通機関の運賃を値上げへ。1月より月額で11.8%増」

 
12月6日、イル・ド・フランス(パリ首都圏)における交通機関の月極パス「ナヴィゴ(Navigo)」は、現行の75.20ユーロ(約10,753円)から84.10ユーロ(約12,026円)に増額されることが決まった。
ナヴィゴとは、パリおよびパリ近郊の公共交通機関(地下鉄、バス、トラム、RER高速鉄道、国鉄)が乗り放題になるICカード定期乗車券である。
利用期間は一日、一週間、一ヶ月間、一年間の中から選ぶことができるが、ほとんどすべての人が一ヵ月単位で購入している。
ただ購入日から一ヵ月有効、ではなく、毎月1日から末日の月額と決められているため乗客は月初に一斉チャージをしなければならず、乗り放題とはいえ柔軟さに欠けるのが難点だ。

その月額が2023年1月1日から84.10ユーロに値上げ(11.8%増)になるというのだから、乗客からは「もううんざりだ」「受け入れられない」といった不満の声があちらこちらで上がっている。
というのは、フランスの企業の多くが交通費を全額負担ではなく半額負担としているため。
つまり値上がりとなれば、会社員は半額の42ユーロ(約6,006円)を自腹で支払わなくてはならない。
 

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パリ最新情報「パリ首都圏、公共交通機関の運賃を値上げへ。1月より月額で11.8%増」

 
値上げとなった背景はこうだ。
運営会社イル・ド・フランス・モビリテは多額の財政赤字により、当初月額75.20ユーロ→90ユーロの値上げを予定していた。
しかしこれでは乗客の負担が大きすぎるとしてイル・ド・フランス県知事のヴァレリー・ペクレス氏が国に抗議。
その結果、仏政府がイル・ド・フランス・モビリテ社に2億ユーロを支援すると決めたことで、11,8%増の84.10ユーロに収まった。

しかしながらこの値上げは月額に限らない。
一週間パスは22.80ユーロから30ユーロ(31.6%増)に、地下鉄の一回券は現在の1.90ユーロから2.10ユーロ(11,8%増)に、10枚の回数券(ICカードのみ)は16.90ユーロから19.10ユーロに値上げされる(13%増)。
 



パリ最新情報「パリ首都圏、公共交通機関の運賃を値上げへ。1月より月額で11.8%増」

 
また公共交通機関の料金値上げは、パリ首都圏以外でも発生している。
来年からはヌーヴェル・アキテーヌ地域圏(仏中部)とプロバンス=アルプ=コート・ダジュール地域などでも値上げが予定されており、仏政府はこれら地域の公共交通機関にも1億ユーロの支援を行うと発表したばかりだ。

そのため「値上げそのものは良いとしても、最近の交通公共機関におけるサービスの低下は問題だと思う」「終わらない工事ばかりして、なぜ国民の負担を増やす必要があるのか?」と、乗客の憤りは当然ながら収まらない。
フランスでは2022年夏よりガソリン、電気、食料品と生活に不可欠なものが次々と値上がりになっているが、こうした動きは2023年も続いていくことが予想される。
ロシア制裁の返り血を大きく浴びている中で、次は何が犠牲になってしまうのか。(オ)
 

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