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パリ最新情報「収まらない仏農家の怒り、各地で起こる抗議デモの原因と現状まとめ」 Posted on 2024/02/01 Design Stories
フランスでは、苦しい生活を余儀なくされた農家たちの怒りが爆発し、各地で抗議デモが続いている。
一月の半ばから始まった抗議活動は、国内主要道路をトラクターで封鎖するなど大規模なものになった。
農家は全国各地から集結しており、現在でもパリ近郊を中心に強い圧力が加えられている。
そしてこの問題は、ガブリエル・アタル新首相の着任から最初にして最大の試練となった。
«On a été patients, maintenant on va monter crescendo» : dépités après le discours de Gabriel Attal, les agriculteurs se disent prêts à rejoindre Paris et resserrer l’étau autour de la capitale
➡️ https://t.co/XpZstv0RdM pic.twitter.com/4nW9B9cj3t— Le Parisien (@le_Parisien) January 30, 2024
※Le Parisien 公式Xより
農家たちの怒りは一朝一夕には収まらない。
フランスの農業は長年にわたって構造的な困難に直面しており、農家たちはその苦しみを訴えるための最終手段として、大規模な抗議を行うことを決断した。
これは、さまざまな政策や資金削減が複雑に絡み合っていることに起因している。
一つの例としては、農業用ディーゼル燃料に対する減税措置の打ち切りがある。
この措置は干ばつと洪水を繰り返すフランスが「エコ政策の一環」として打ち出したものだった。
しかし結果的には、以前から生活苦を訴えていた仏農家をさらに苦しめることになってしまった。
また、農薬・除草剤の使用制限や、南米産の牛肉の輸入拡大を可能としたEUの新条約も原因の一つになっている。
安価な輸入品が出回れば価格競争に勝てず、国産品が売れ残ってしまう。
激しいインフレ下のフランスでは非常に切実な問題だ。
これに対してフランスの畜産農家たちは、「厳しい動物福祉基準が適用されない国々と競争するのは至難の業だ」と悲痛の声を上げた。
フランスは欧州一の農業大国だが、同時に欧州一の厳しい規格を設けている国でもある。
消費者にとっては安心でも、上がり続けるコストと減る人材のバランスは現場でまったく取れていない。
さらに、それぞれの規制内容がとても複雑なため、彼らにとっては何ができて何ができないのか分からない状態なのだという。
中にはひと月1000ユーロ(約16万円)以下の収入で暮らし、週に一回は何らかの必要書類にサインをしなければならないという人もいる。
なおINSEE(フランス国立統計経済研究所)によれば、仏農家のほぼ5世帯に1世帯が貧困ライン以下で生活しているそうだ。
穀物、畜産、園芸などさまざまな農家が集結している今回の抗議活動。
その内容は、高速道路を圧縮された干し草で封鎖したり、肥料に使う糞尿をまいたりと、かなり象徴的なものだ。
こうした活動は各地で行われているのだが、1月24日には仏南西部のマクドナルド店舗が農家によって襲撃されている。
農家らは、デモ活動の支援のあかしとして店舗にコーヒーの無料提供を求めていた。
しかしマクドナルド側はそれを拒否。不服に思った農家は「フランス産の農作物を使用していない」という大義名分のもと、店舗に大量の藁をまいて営業を停止させてしまった。
ところがフランスのマクドナルドは、原料の75%を国内で調達していると弁明した。
現在では公式ホームページ上で、約3万件の仏農家と提携している事実を述べた「農家とともに(Aux côtés des agriculteurs)」という特別ページを設けている。
フランスではこのような農家の怒りが、企業を巻き込んだ形であちこちに飛び火している。
先週には仏政府も打開策を発表していたのだが、労働組合側は「不十分だ」とし、パリ中心部やランジス市場(パリ首都圏の食糧庫と呼ばれる最大の食糧市場)の封鎖を追加で示唆した。
またこれらの抗議活動はフランスだけでなく、ドイツやポーランドをはじめとしたEU各地でも行われており、2月からはスペインの農家が参加を表明している。
こうした緊張が高まり続けるなか、6月の欧州選挙に向け、農業はEU全域で大きな争点となりそうだ。(内)