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パリ最新情報「パリ市の新ルール『中心部は車で通りぬけ禁止』に賛否両論?!」 Posted on 2024/11/08 Design Stories
パリ中心部では11月4日より、「車の通りぬけを禁止」するという新たな交通規制がはじまっている。目的は、環境負荷を軽減しながら、歩行者や公共交通機関の優先度を高めること。渋滞の緩和も理由のひとつだ。
そのため今後は、特別な理由をのぞき、自家用車はパリ中心部を避け別のルートを通らなければならない。
規制の範囲は、パリの1区、2区、3区、4区。大まかにいえば、西はコンコルド広場まで、北はモンマルトル大通りまで、東はレピュブリック広場とバスティーユ広場、南はセーヌ河岸(右岸)までと、パリでも有名な大通りに囲まれている。
つまりこれからは、パリ中心部を「近道」として通りぬけることができなくなる、というわけだが、区域内の病院に行く、ホテル宿泊やレストランに行くといった明確な理由がある場合には、発着が認められる。しかしレシートやチケット等を提示しなければならず、違反者には25年4月より135ユーロの罰金が課される予定だ。
※対象は自家用車で、自転車やタクシー、公共交通機関、配送車および緊急車両はこの影響を受けない。制限区域内の住民が使う車に関しても、通行が許可されている。
※交通規制が敷かれた区域。©Paris
当初、パリ市は2024年の春に導入する予定だったが、オリンピック時の物流を考慮して、スタートを秋以降に延期したという。
しかしオリンピック前から続く厳しい交通規制に対しては、住民の「慣れ」や「あきらめ」もあるのだろう。スタート前には反対意見も多かったと聞くが、パリ市はローマやマドリッドでの導入例をもとに、満を持して規制をスタートさせた。
反対意見の多くは、「中心部の通りぬけを禁止しても、渋滞が別の地区に移動するだけで根本的な解決にはならない」というもの。
これは確かにそうで、パリ近郊の渋滞はどんどん酷くなっている。シャルル・ド・ゴール空港からパリ市内への道なども、(以前からではあるが)朝晩のラッシュ時には非常に混雑しており、目的地到達までにかなりの時間がかかってしまう。
※交通規制後、夕方のラッシュ時の様子
自転車走行者との衝突も、近年のパリでは問題になっている。以前のパリでは、ドライバーとドライバーの口論が当たり前のように起こっていた。しかし今では“ドライバーとサイクリストの口論”が日常茶飯事に。パリ市による度重なる「車の締め出し」で、増えすぎたサイクリストと、それにフラストレーションを募らせるドライバーの衝突が起きてしまっているのだ。
ただ、悪い面ばかりではない。パリ市長が以前から提言していたように、パリはここ数年で「歩行者にとってやさしい街」へと劇的に変化した。
中心部を歩けば「騒音が少なくなった」という印象を受けるし、交通が減ったことでパリの歴史的建築物はよりハッキリと、美しく見えるようになった。オリンピック後にはエッフェル塔前の通りも歩行者天国になったので、旅行者にとっては便利で動きやすいだろう。
もはやパリは、車を使わない人にとってはやさしい街、ドライバーや車が必要な人にとっては避けたい街、と言える。規制によるしわ寄せもあちこちで発生していると思うが、パリ市の大胆な改革はこれからも続きそうだ。(大)