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パリ最新情報「フランス新首相にバイル氏、ベテラン政治家が厳しい政局に挑む」 Posted on 2024/12/14 Design Stories
12月13日、フランス第五共和制の第28代首相にフランソワ・バイル氏が任命された。バルニエ前首相の総辞職から9日後のことだった。
バイル氏はベテランの政治家で、ミッテラン、シラク両政権で教育大臣、マクロン政権では司法大臣を務めた経験を持つ。フランス大統領選挙にも2002年、2007年、2012年の3度にわたり立候補しているが、いずれも当選には至らなかった。直近では中道派政党「民主運動(MoDem)」の議長を、またフランス南部の都市、ポー(Pau)で市長を務めている。
当初は、「前首相の総辞職から数日以内に決定する」と言われていたフランスの新首相。しかし実際には、決定に9日間を要した。その背景には分裂したフランス議会をはじめ、数カ月にわたる政治的混乱があったとされる。
任命が行われた13日、バイル氏は午前8時30分にエリゼ宮に到着し、マクロン大統領との会談に臨んだ。会談は1時間45分にわたって行われ、一部では緊迫したやり取りがあったという。エリゼ宮の関係者はそうした中で、「協議が進むにつれ、バイル氏が『一般的な支持を得られる政府』を樹立するのに最もふさわしい人物として浮上した」と、フランス・テレヴィジョンに向けて述べている。
※フランソワ・バイル新首相
https://x.com/gouvernementfr/status/1867536872513450000?s=51
2017年には大統領選挙から撤退し、マクロン大統領の支持に回っていたバイル氏だが、新首相となった彼の机上には、いくつかの緊急課題が待ち受けている。
まず第一は、RN(国民連合)やLFI(不屈のフランス)を除く左派から右派までの各政党との協議を通じて、非検閲協定(※)を進展させること。そしてもう一つは、バルニエ前首相が辞任に追い込まれるきっかけとなった、2025年予算案の問題だ。さらに、この国が依然として抱える年金問題や移民問題も、解決すべき重要な課題として残されている。
2か月半と短命に終わったバル二エ前首相と同じ運命をたどらないためには、上記を踏まえた、重大な閣僚人事にも取り組まなければならない。
※首相は憲法第49条3項を使わないことを約束し、その代わりに野党は政府を問責しない、というもの。フランス政府は49条3項を発動することで、議会での採決を経ずに法案を採択することができる。
一方、13日17時には、パリのエリゼ宮で首相引き継ぎ式が行われた。バイル氏は就任時の挨拶として、「私ほど状況の難しさを認識している者はいない。この先に待ち受けるヒマラヤ山脈のような困難のすべてを理解している」としながら、今後は「何も隠さず、何も見過ごさず、何も片隅に置かない」と、誠実な業務を約束した。
そんなバイル氏は、フランスでも広く知られた政治家だ。そのため今回、彼が首相に選ばれたことについては「ついに」という意見が多かった中で、ここ数か月にわたる政治危機に「もはや沈没船に乗っているようだ」と、フランスの将来を憂う声が少なくなかった。
確かに、2024年は首相が3度も交代するという異例の年であった。マクロン現大統領のもとでは、バイル氏で実に6人目の首相となる。
「瀬戸際」と思えるフランス政局に好転の兆しはあるのか。また、ベテラン政治家に内政の舵取りを託したマクロン大統領は、何を思い描いているのか。今後の動きに注視したい。(大)