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パリ最新情報「仏プレタポルテの危機、中間層が相次いで更生手続きへ。古着の台頭で」 Posted on 2023/02/13 Design Stories
フランス人が服を買わなくなった。
これは、パンデミックで明るみなった現象だ。
人々の外出機会が減ったことにより、特にセミフォーマルな衣料を扱うアパレルブランドがフランスでは苦境に立たされてしまった。
パンデミックが落ち着いてからも動向は変わっておらず、フランス人の多くは動きやすいカジュアルな服、ホームウェア、フィットネスウェアなどをメインに新調しているといった印象だ。
もう一つ、今の20代〜30代の年齢層では、エコ意識の高まりで古着が人気となっている。
古着人気は世界的な傾向と言えるかもしれない。
ただフランスでは、古着業界にデジタル・プラットフォームがセットになったことでその拡散力・影響力が高まり続けており、コロナ後からパリを中心として大きなトレンドとなっている。
インフレの影響はもちろん大きい。
アジア地域で人手を搾取するファスト・ファッションへの風当たりは強くなっているものの、低価格帯のブランド勢は冬季のセールでも好調だったということだ。
またパリには富裕層向けのハイブランドもいくつかあるが、観光業の復活でブティック前には連日のように列ができており、「苦境」「危機」といったマイナスなニュースはこちらでも一切流れていない。
今、仏アパレル業界で危機に立たされているのは、中間層の仏既製服ブランド(プレタポルテ)に他ならない。
例えばクーカイ(Kookaï)、ピンキー(Pimkie)、ギャップ・フランス(Gap)、カマイユ(Camaïeu)などの既製服ブランドは、昨年秋より続々と更生手続申請(破産に準ずる手続)したことを発表しており、「フランスのミドル・クラスの既製服部門が崩壊」という見出しのニュースも頻繁に見かけるようになってしまった。
インフレはこれらのブランドにとどめを刺してしまったようだ。
1〜2月には仏スポーツ・セレクトショップのGo Sport、またシューズショップのアンドレ(André)が更生手続を発表。
営業はしばらくの間続けるが、数百〜数千人いるとされる従業員の将来はまったく保証されていない。
仏メディアによれば、中間層の崩壊原因にはいくつかの要素が組み合わさっているという。
まずはここ数年、繊維の購入量が業界全体で減少し、市場自体が縮小していること。
また1990年代に一世を風靡したクーカイなどの仏既製服ブランドが、デジタル産業に乗り遅れてしまったことや、買い手(投資家)が見つからないことなどが大きな原因であるとした。
また仏消費者も、2021年末から続く食料品の値上げ等によって服を買い控えている。
※フランス人の多くは金銭的に余裕が出れば服よりレジャー、バカンス、外食に費やしたいという調査結果も出ている。
このようにフランスでは、短い間で中間層の既製服ブランドが次々と倒れ、アパレル大不況の犠牲になっているのだが、今後数か月~数年のうちには他のブランドも困難に直面することが予想されている。
2022年では、フランスの衣料品の売上はパンデミック直前の2019年の水準を10%近く下回る状態が続いたという。
しかし、このようなハイブランドと低価格ブランドの「二極集中」は今後変化するとも言われている。
仏ファッション協会(IFM)の見解によれば、将来的にフランスの人々は服にかけるお金をより少なく見積もり、ファスト・ファッションが環境に与える悪影響をより強く意識するようになるだろう、ということだ。
そして人々の興味は、環境に配慮した意識の高いブランドや、近年爆発的に普及している古着にますます移るだろうとされている。(セ)