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パリ最新情報「電力不足のフランス、年明けに計画停電の可能性が浮上。」 Posted on 2022/12/05 Design Stories
電力不足が深刻化するフランスでは、家庭を含む大規模な計画停電の可能性が浮上している。
現在、世界中で電力不足・天然ガス不足が続いているが、仏ボルヌ首相は9月の時点で「フランスの天然ガス備蓄は9割まで進んでいるため、10%節減の目標が達成されれば一般家庭への電力供給停止はない」としていた。
ところが3か月経った今、フランスの電力事情に暗雲が立ち込めている。
可能性が浮上した大きな理由にはまず、今季早々に始まった寒波の到来がある。
首都パリではこの週末に最高気温が5度を割り、初雪の可能性さえ示唆されていた。
よって、気温が急に低下し始めた11月から電力使用量が激増したことで、備蓄エネルギーが思いのほか早く減ってしまっているのだ。(寒波が来なければ備蓄は115日間もつだろうと言われていたが、そもそもこれは9月1日を基準とした日数だった)
原発の停止問題も大きい。
フランスに原発は56基あるが、そのうちの20基は12月に入った今でも停止中だ。
というのは、配管腐食や冷却回路の亀裂で点検作業および修理作業が長引いているため。
仏政府は、2022年末までにすべての原子炉を復旧させるべく急ピッチで作業を進めていた。
しかしながら過去20年間、仏政府の原発への投資が不十分であったことが響き、またウクライナ問題で各部品の調達が大幅に遅れてしまったことで作業は難航した。
そのためすべての再開は早くても2023年の1月末、遅くて2月末にずれてしまうという。
こうした諸々の事情を踏まえ、仏政府は12月1日、来年1月に行われる計画停電の可能性を示唆し、全国の自治体に通達を出した。
これは一定地域ごとに電力供給を順次停止・再開させる「輪番停電」で、大規模停電を避けるための最後の手段でもある。
それではフランス国内で起こりうる計画停電とはどのような内容なのか?12月4日現在ではまだ決定となっていないが、発表された重要ポイントを以下にまとめた。
・対象地域はフランス全土で順次(コルシカ島除く)となる。期間は2023年1月のうち数日間〜未定。
・仏政府の計画では、一度停電になった地域では二度目は停電にならない。
・時間帯は電気消費量が最も多くなる2つの時間帯、すなわち平日朝の8時〜13時、夕方の6時〜8時の間で、実行時間は企業を含む1世帯につき1日最大2時間程度。
・人々の活動が低下する土日は除外される。
・計画停電の対象地域に居住する国民は、自治体もしくは仏送電事業者「RTE」の公式ウェブサイトにて3日前に通告を受けることになる。ただ一度に400万人以上の国民に影響を与えないよう、地域ごとに代替的な方法が取られる。
・医療施設、警察、消防、信号機、空港、銀行ATMには影響されない。
・在宅医療や介護を行っている人は停電を避けるため、地域の保健機関(ARS)に各自連絡することが必要となる。
・各スーパーマーケットは非常時に必要な施設として営業するが、ピーク時には暖房や照明の大幅なカットが要求される。
・フランス国鉄SNCFは地域によって2時間を超え一時運休となる可能性が高い。これは輪番停電とはいえ、乗客が突然2時間も車内に閉じ込められるのを避けるために計画されている。
・首都圏のRATP社(パリ交通公団)にいたっては、独自の高圧変電所を7カ所保有しているため運行には影響ないとしているが、駅構内のエスカレーター・エレベーターが停止になる確率が高いので、もし停電が実行された場合のエレベーター利用は必ず避けてほしいと述べている。
・期間中、学校は午前休もしくは午後休になる可能性があり、前日までに保護者に連絡がいく。
・なおパリ市においては政府施設、大使館など国の重要機関が集中しているため、電力消費の20%しかカットできないと仏政府は示唆している。
マクロン大統領が12月3日に述べた内容によると、「パニックになる必要はない。
極端なケースに備えるのは政府として当たり前のこと」と、計画停電の可能性を否定も肯定もしていない。
しかしもし実行されれば、一日2時間とはいえフランス国内への影響は大きなものとなるだろう。
今後どうなるのか、近日中の発表が待たれる。(内)