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パリ最新情報「続くパリ市と南京錠の攻防戦。最古の橋ポン・ヌフでも強化ガラスが設置される」 Posted on 2023/03/16 Design Stories
「私たちは愛に賛同しますが、南京錠は必要ありません」というパリ副市長の宣言のもと、ポン・ヌフでは強化ガラスの落成式が3月6日に行われた。
ポン・ヌフは石造りであるが、中央部分にあった広場にはフェンスがつい最近まで存在していた。
今回これが強化ガラスに変更になったことで、過去にあったフェンスは南京錠もろとも撤去、という運びになった。
ポン・ヌフとはセーヌ川に架かるパリ最古の橋で、数々の映画やドラマの舞台にもなった、パリの観光名所でもある。
中央部分の広場には中州に降りるための階段があり、この橋を建設したアンリ4世の銅像(1604年)も存在している。
ポン・ヌフではこの広場周辺だけがフェンスで囲われており、そこに南京錠を掛けるカップルが最近まで後を絶たなかった。
セーヌ川に架かる橋では、「愛の南京錠」がひと昔前の風物詩であった。
しかし一番数の多かったポン・デ・ザール(芸術橋)では2014年6月に欄干の一部が崩壊し、大変危険な状態に陥ってしまった。
そのため約50トンにも及んだ南京錠は撤去され、今ではポンヌフと同じ強化ガラスの欄干が設置されている。
今回のポン・ヌフは部分的とはいえ、セーヌ川ではすでに4番目となる。
つまりポン・デ・ザール、アルシュベシェ橋、レオポール・セダール・サンゴール橋に続き、ポン・ヌフは愛の南京錠から逃れるためにガラスで飾られた、4番目の橋になったということだ。
※ポン・デ・ザール、2023年3月現在
セーヌ川ではないが、昨年にはモンマルトルのサクレクール寺院前でも南京錠が撤去された。
こうしてパリ市では、愛の南京錠との攻防戦が繰り広げられている。
しかしカップル(旅行者がほとんど)がフェンスを見つける速度は早く、サン・ルイ島付近の柵にはまた南京錠が増えてきたといった印象がある。
中には南京錠を柵に掛けたあと、鍵をセーヌ川に投げ捨てるというカップルもいるということで、パリ市はその対応に頭を悩ませている。
※サン・ルイ島付近のセーヌ川
今回、パリ市がポン・ヌフの強化ガラス設置に費やした予算は100万ユーロ(約1億4300万円)を超えたという。
ガラス板設置にしては高額な気もするが、パリ市は橋の両サイドにあるマスカロン(彫刻など)を補修したことに加え、ポン・ヌフ内に2本のサイクリングロードを新たに設けて、橋全体を綺麗に整えたと発表した。
ただ次なる悩みは、ガラス板への落書きかもしれない。
ポン・デ・ザールではすでに落書きが何カ所も存在していて、先週できたばかりのポン・ヌフでは一カ所の落書きが確認できた。
パリで迷惑行為をすれば罰金が付き物だが、将来的にはガラス板への落書きにも罰金が課される可能性がある。
そのためパリ市は、訪れる旅行者に節度ある行動を呼びかけている。
パリ副市長で公共施設を担当するダヴィッド・ベリアール氏に至っては、「鎖につながれていなくても、私たちは愛し合うことができる。ポン・ヌフから撮影する“透明”な景色は、さらに美しい愛の思い出となるでしょう」といかにもフランスらしい言葉を、6日の落成式で述べた。(チ)