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パリ最新情報「ピカソ未公開作品、パリ国立ピカソ美術館で展示中!」 Posted on 2022/08/06 Design Stories
20世紀の巨匠、パブロ・ピカソの未公開作品が今、パリの国立ピカソ美術館にて展示されている。
作品数は絵画6点、彫刻2点、スケッチブック1冊の合計9点。
これはピカソの長女であるマヤさんが昨年9月、相続税支払いの代わりにフランス政府に寄贈したものである。
ピカソは多作の画家としても有名だ。
生涯で制作した作品数は14万7800点と桁違いで、絵画だけでなく、素描や彫刻、陶器、版画、タペストリーなども含まれている。
ただその多くを子供たちに遺産として残したこともあり、彼の子孫には莫大な相続税が課されてしまった。
長女マヤさん(86歳)は、近頃ではそんな遺産の整理に取りかかっているという。
今回の寄贈については、「芸術は目に見えるものでなければならない。見られて初めて存在する、という考えは、残された家族全員に一致する意見です」とコメントしている。
フランスは、1968年から相続税を現金だけでなく、歴史的価値の高い芸術作品などでの納付を認めている。
こうすることで名作が海外に流出するのを防ぎ、芸術大国フランスの地位を守る目的があるとのことだ。
なお未公開作品9点の具体的な値段は公表されていないが、それが恐ろしいほど巨額であることに疑いの余地はない。
仏文化相のロゼリーヌ・バシュロ氏によれば、「寄贈された中にはパブロ・ピカソ13歳から90歳までの作品が並んでおり、わずか数点で彼の創作の全貌を知ることができる、類まれなアンサンブル」であるという。
実際にピカソ美術館に入ると、ピカソが13歳で描いた絵画「ドン・ホセ・ルイス」が、エントランスからすぐの所に展示されている。
これは美術教師だったピカソの父親がモデルで、ピカソ自身は生涯を通してこの絵を売ることを拒んでいたそうだ。
※全9点の中で最も古い作品「ドン・ホセ・ルイス」、1895年
息子ピカソの天才ぶりに驚愕し、父親が絵を描くのを辞めてしまった、というのは有名な話である。
「ドン・ホセ・ルイス」は、13歳が描いたと思えないほど重厚な色彩感覚・無骨な筆運びが特徴的だ。
壮年男性の「何かに打ちのめされた」ような表情を、ここまで絶妙に描いた少年ピカソの感性にも感服してしまう。
※全9点の中で最も新しい作品「男の頭部」、1971年。ピカソが他界する2年前に描かれた
※「いすの下に座りキャンディーをくわえた子ども」、1938年
中でも印象的なのは、1938年の絵画「いすの下に座りキャンディーをくわえた子ども」である。
これはマヤさんがモデルとされ、第2次世界大戦直前の恐怖に包まれた世界をモノクロで表現したものだ。
ピカソが最も高い評価を得た「キュビズム時代」の作品であり、未公開作品の中でも極めて価値が高いとされている。
なおピカソ美術館では、これらを寄贈した長女マヤさんに敬意を払い、ピカソが描いた「愛娘マヤ」の作品シリーズも同時公開中だ。
こちらは未公開作品と同じく期間限定で、2022年4月16日から12月31日までとなっている。
※「船を持つマヤ」、1938年
2022年のピカソ美術館は、この度の作品に加え、3月に女性館長のサビーヌ・ロンガン氏が就任したりと元気が良い。
未公開作品が年末までの限定公開、というのが残念ではあるが、2023年4月にはピカソ没後50年を迎える。
美術館によればその時期、館内3フロアにおいて厳選コレクションを再配置する予定があるということだ。
詳細はまだ発表になっていないものの、今回の傑作が再集結することを願いたい。(る)