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パリ最新情報「マクロン政権、年金改革案を発表。大規模なデモの再来か」 Posted on 2023/01/12 Design Stories  

 
1月10日(火)、仏政府は定年引き上げを含む年金改革案をついに発表した。
年金改革はマクロン大統領就任以来の最大の課題であり、兼ねてより国民の反対・議論を誘発してきた大きなテーマだ。
10日17時半にボルヌ首相が発表にした内容によると、実質的な定年にあたる年金受給開始年齢を現行の62歳から「段階的に」引き上げ、今から7年後の2030年には64歳に定めるということだ。
早ければ今年の9月1日から始まり、一年毎に3か月、つまり2024年には62歳6か月、4年後の2027年には63歳3カ月と徐々に引き上げられ、2030年には目標の64歳に到達する。
 



 
ボルヌ氏は記者会見で「現実を直視することが必要だ」と国民に向かって訴えた。
またこのまま何もしなければ2030年にはフランスは約200億ユーロの赤字になる可能性があり、旧年金制度への是正が急務であると強調。
「定年退職年齢を引き上げなければ、年金支給額の引き下げや増税などさらに不当な措置を取る必要がある」とも警告した。

加えてフランスでは、年金を満額受給できるには43年間働くことが必要になるという。
これは過去の計画より8年も前倒しとなっており、本来は2035年からだったのを今回の年金改革案で2027年からと変更された。
ただしパン職人など、例えば18歳から働き始めた人は60歳での定年が可能になる。
一方で電力やガス業界など主な公共部門で認められている優遇策「特別年金制度」について、新規採用者には今後適用しないとした。
 

パリ最新情報「マクロン政権、年金改革案を発表。大規模なデモの再来か」

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近年では他のヨーロッパ諸国でも年金改革が行われているのだが、フランスの年金受給開始年齢は現行で62歳と、ヨーロッパ諸国の中でもかなり若い。
マクロン大統領も昨年12月31日の国民向けテレビ演説で「2023年は、これから何十年と続く制度のバランス確保を目的とした年金改革の年になる」と実現の意志を強調していた。

しかしながら仏国民がそれにすんなり迎合するかというと、やはりそうはならない。
過去の年金改革でも大規模なストライキ・デモが発生しており、コロナ流行直前の2019年末にはフランス国鉄・パリ交通公団による合計で47日間の「ゼロメトロ」ストライキが発生した。
マクロン政権の当初案はこれによっていったん取り下げられ廃案となっていたものの、大統領に再選したことにより改めて年金改革に本腰を入れたという形になる。

そして今回、仏労働組合の反応は非常に早かった。
政府の記者会見後にはパリにある8つの労働組合のリーダーが労働局に集結し、1月19日にフランス全土で大規模なストライキおよびデモを行うことを決定した。
詳細はまだ明かされていないが、交通機関などの混乱が予想されるため、今後の報道に注意したい。
 

パリ最新情報「マクロン政権、年金改革案を発表。大規模なデモの再来か」



 
仏テレビ番組BFMが10日夜に緊急調査した内容では、フランス人の大多数(68%)が今回の年金改革に反対であることが分かった。
さらにその内の46%は「1月19日に街頭に立つ準備ができている」と回答している。
こうしてフランスにおける年金改革は、最も国民の反感を買うテーマの一つだと言える。
自らの「損」を甘んじて受け入れないためだ。
それ故に今後のストライキはフランス政府とフランス国民、両者にとって1歩も譲れない闘いとなりそうだ。(内)
 

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