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パリ最新情報「パリ市、保育園や小学校の周辺道路を歩行者天国に」 Posted on 2022/07/06 Design Stories  

 
パリ市は6月末、首都圏全域で「Rues aux écoles(スクール・ストリート)」を追加整備することを発表した。
これは2020年に開始された計画で、パリ市内では継続的に展開されている。
内容は主に、保育園や小学校の周辺道路を完全に歩行者天国とし、なおかつ緑化を推進するもの。
現在ではすでに168本の道路が市内で完成しているのだが、パリ市は2023年3月までに追加で30本、2026年までに100本の緑豊かな通学路を作ることを目標としている。
 

パリ最新情報「パリ市、保育園や小学校の周辺道路を歩行者天国に」



 
これは2020年におけるアンヌ・イダルゴ市長の選挙公約でもあった。
目的は「小さなパリジャンやその両親、教育界にとって、より安全な登校を可能にすること」であり、「大気汚染との戦い」でもあると市は説明している。
つまり子供たちが安全に登下校できるのはもちろん、周辺道路に植樹することで公害対策・ヒートアイランドの軽減が期待できるとのことだ。

子供たちが通学途中に事故に巻き込まれるケースはパリでも少なくない。
道が狭く、視界も狭いパリでは、小さな子供やワンちゃんが飛び出してヒヤッとする場面に幾度となく遭遇する。

しかしこのスクール・ストリート計画は少なからず安全を確保するものになるだろう。
学校前の歩行者天国に時間制限はなく、車の侵入は一切禁止。(救急車など緊急車両・ゴミ収集車を除く)
これによって子供たちが一番飛び出しやすい校門前付近が安全に保たれることになった。
 

パリ最新情報「パリ市、保育園や小学校の周辺道路を歩行者天国に」

※パリ8区、ビエンフェイサンス通りで完成したスクール・ストリートの様子。

地球カレッジ



 
保育園や小学校前の緑化も進む。
パリ市は2023年3月までに新たに30本のスクール・ストリートを設置するとしたが、そのうちの24本には合計60の木が植えられる予定だ。
中にはリンゴや梨、サクランボやアプリコットの木も植樹され、街路樹ではなく果樹園とするストリートもあるという。

パリ市によると、これは美観目的だけでなく、学校付近の空気が新鮮になるよう環境面での付加価値も考えられているとのことだ。
また気候変動への懸念も大きい。
パリ市はコンクリートジャングルのためヒートアイランド現象が他の都市部に比べて顕著であり、背の低い子供たちにとっては夏は過酷なものだ。
学校周辺以外でも緑化がどんどん進んでおり、「より激しく、より頻繁に起こるであろう熱波に適応するために、涼しいパリを作る必要があります」と市は説明している。
全体の予算は40万ユーロ(約5600万円)で、緑地の維持管理を担当するスタッフを16人から40人に増やす計画もあるそうだ。
 

パリ最新情報「パリ市、保育園や小学校の周辺道路を歩行者天国に」



 
今回のスクール・ストリート計画に保護者からは安堵の声が上がっている。
「昔はとても危険だったが、今はそうではない。私たちは非常に満足していますし、すべての学校に拡大されるのは良いことだと思います」「心強い」「このシステムを導入してから事故がなくなった」と、パリの父親・母親は胸を撫で下ろした。

一方、パリのドライバーはどんどん肩身が狭くなっているというのも現実だ。
「子供たちのためにやってくれたことは素晴らしい。ただパリで車を持つのはもう難しい」「最近、道路でピクニックをする人を見かけるようになりました」といった周辺住民の声も聞かれるとのことだ。

パリで乗用車を持つのは確かに骨が折れるが、歩行者にとっては快適な街になりつつある。
今回のスクール・ストリート増設により痛ましい事故がゼロになることを願う。(大)
 

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